林 典子さん(フォトジャーナリスト)
時には、NGOと連携し、撮り溜めた写真を使ってポスターを作り訴えることもある。そうすることで、各分野の専門家の動きを促したい、そういう意図だ。アフリカなど諸外国に比べ、日本はまだまだ豊かだ。ある程度、自由に使える水、都市部にいれば殆んど全ての日用品も手に入る。一度でも海外へ出て生活すれば、これらの凄さを忽ち実感することになる。反面、国を出なければ、その素晴らしさを感じることも少ないだろう。自分の伝える写真で、富に、自由に恵まれない人たちを伝え、何かを感じてもらえれば、享受する恵みへの感謝、社会貢献活動への意識、周囲との接し方も変わるかもしれない―そういうことを大事に思う。だからこれからも取材を続けていく。講演などが忙しく、なかなか動きが取れない日が続くが、イラクのクルド自治区に地道に足を運んでいる。危険よりも、生活様式の違いの方がつらい、カルチャーショックは感じない方なんですが、実はベジタリアンなんです。取材には合わない体質かも、そう微笑む視線は、言葉とは裏腹に志に満ちていた。
はやし のりこ 1983年生まれ。大学在学中に西アフリカ・ガンビアの地元新聞社ザ・ポイント紙で写真を撮り始める。2012年「失われたロマの町」、13年「キルギス 誘拐婚の現実」をナショナルジオグラフィック日本版に発表。著書に『フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳―いま、この世界の片隅で』(14年)、写真集に『キルギスの誘拐結婚』がある。14年、全米報道写真家協会(NPPA)「フォトジャーナリズム大賞(現代の社会問題部門)」1位受賞。
(月刊MORGENarchives2015)