鈴木 勢將さん(INS&カンパニー株式会社代表取締役社長)

大越 人生を切り拓いた秘訣はなんでしょう

鈴木 皆さん、僕の概略だけ見ると、すごくエネルギッシュだっておっしゃるんですけど、逆で、僕は元来エネルギーだけがないんですね。これまでの事業も本当にたまたま誰かが持ってきた厄介話を一個一個解決しているっていうだけで。「夢に向かって」とか「目標を決めて」とか邁進するタイプじゃないんですよ。ただ実は僕は人生で2度、人を亡くしてるんです。一人は5歳のときで、午前中一緒に遊んだ男の子が午後にはいなかった。事故に遭って死んでしまったというんです。もう一人は25のときにあったフリーライターの女性で、ご飯を食べた後、やっぱり亡くなった。で、実はそのとき、ご飯を食べながら不思議と女性に嫌な影が差している気がしていたんです。でも、どう伝えたものか分からないし、とりあえず帰して、その結果亡くなった。それで、それまでは引きこもっていたというのもあって、やっぱり人と徹底的に距離を取る生き方だったんだけども、もしかして自分が関わることで何かが変わることもあるんじゃないか、と思ったんです。で、だったらむしろもう今までの逆で行こうと。

 そこから、せっかく人と関わっているんだから、何か自分の何か長所みたいなものを出していこう。ゲームのキャラクターを作るみたいに、と考え始めて。多分自分の長所は交渉能力と分析だろうと二つに絞った。逆に言うと、時間通りに行動するとか、決まったことをやるとか、そういう社会性って僕は非常に疎いんでそれはもう諦めようと。そう決めて、26歳からリスタートした。それが今のスタンスの「何か来た話に関しては、基本的にあんまり断らないで話を聞いて、それに対するソリューション――自分で解決方法を提示するっていうやり方に繋がっているんです。それは仕事に関わることもあれば、そうじゃないこともある。だから仕事をしてるって言えばそうなんですけど、どちらかと言えば、何か人の話を聞いて解決するってことを淡々とやっているっていう感じです。それが僕の人生観ですね。

鈴木 勢將 一九七六年、北海道十勝郡浦幌町に生まれ、学校という仕組みに適応することができず、徐々に社会に参画することも定職に就くこともなく、大学に未来でもない生活を続け、「Ultima Online」と出会い、決定的に実社会から距離をおくことになる。オンラインゲームを通じた経験から、自分社会と自分とをつなぐ意義や方法を見いだし、絵に描いたようなヒキオタニート生活から社会復帰を果たす。二〇〇六年、父親の要請により、釧路三菱自動車販売株式会社へ入社。二〇一二年に代表取締役に就任。同じく二〇一二年にINSアンドカンパニー株式会社を設立、自動車販売業以外の事業を模索し始めます。二〇一四年、新釧路スズキ販売株式会社を設立。二〇一五年、INSカンパニーの新事業としてバリスタートコーヒー一号店を札幌にオープン。二〇二二年までに北海道を拠点に四店舗。また二〇一九年より海外へも進出し、シンガポールマレーシア店を展開。二〇二二年にはインドネシア香港への進出も予定している。

(モルゲンWEB2023)

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