上田 岳弘さん(作家)
なぜ留年を
就職するのか、弁護士を目指すのか、作家を目指すのか、ちょっと決めあぐねていたというのが大きいですね。「何年」と浪人の期限を決め、弁護士資格取得を目指すのか、作家を目指すのか、それとも一旦就職するか……。色々考えたけど、結局作家が一番なりたいものだった。弁護士にも興味はあったけど、友人や先輩を通じて弁護士の仕事を聞いてみると、法律の解釈を延々とやるという。自分向きじゃないな、と思った。それを楽しいとは思えそうもない、と。友人たちも、「お前みたいなタイプには多分向いてないよ」と口を揃えた。
当時好きだった作家は
その頃はドストエフスキー、シェイクスピア、夏目漱石……、いわゆる「古典」を読んでいました。今でも創作に悩むと、その3つの作家に立ち戻るときがあります。
処女作はいつ
大学3年生の終わりごろに書き始めた。最初に書いたのは、今と似たようなテイストのものです。後になって、純文学の新人賞があると知り、受賞作や、説明文を見て、「ああこういう風に書くんだ」と傾向に寄せはじめた。でも、結局そのときは芽が出ず、就職を経験することになりました。兆しがあったのは30を過ぎた頃。そろそろまた小説をはじめようかな、とキーボードに指をかけ、今度はもっと自分の思いのままに書こうと決めた。それが今の作品に繋がっている感じですね。
その後キャリアは順調に。ご自身振り返りその辺りは
何も賞が全てではないですし、「才能」と一口に言っても様々の要素があると思います。僕の場合、単純に、自分が書きたいものを書こうと腹が据わったのが30を越えてからだった。そこからは順調に発表できていると思います。
書きたいものとは
僕はある種、思考実験的に書くタイプなんです。だから「書きながら考える」。その時々に興味あるものを書きながら考える、という感じですね。