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中村 太地さん(将棋棋士)

受験も経験されます

 小学校で「プロを目指す」と決めたときに、高校、大学の受験はどう考えても大変なので中学で受験しよう、と親と話しあった。それで中学で受験をして合格し、そこからエスカレーターで大学に入った。

棋士の方は数学が得意とよく耳にします

 たしかにそうかもしれませんね。僕も小学校のときは算数が大の得意でした。さすがに高校ぐらいになるとその複雑さに辟易もしましたが、論理パズルのように考えて答えを導くのが好きでした。

大学は難関の政経学部に

 高校のいろいろな授業を受けるなかで、社会科の、それも政治の分野にとくに興味を惹かれた、というのが大きな理由でしたね。でも実はその当時、法律にもかなり興味があって……。だからこのときには、法学部とどっちにしよう、と、相当迷いました。最終的には、「法学部は出席に厳しい」という風の噂が耳膜を貫き、将棋の対局はいつも平日にある。法学部だと両立は難しいかもしれない――と政経学部への進学を決めました。が、もちろん政経学部は学内で人気の高い学部です。当然、学内試験では常に上位に入らなければいけない。だから将棋のときは将棋に、学業のときには学業にと頭を切り替えながら、懸命に勉強しました。

厳しい両立の原動力は

 そんなたいそうなものじゃないですよ(笑い)。ときにはダレたりもする。まあでも、基本にあるのは、「将棋をやるためにいろんなことをやる」ということですね。全部自分のためのなので頑張るしかないかな、と。あと、よく「将棋には集中力を上げる効果がある」と言われますが、それはすごく思いますね。僕の周りでも、普段は落ち着きのない活発な子どもが、将棋盤の前に座った途端、ピタっと集中するのを目にすることがある。将棋には考える時間が多くある。それを思うさま考え抜いて、理解が深まれば深まるほど面白くなる。盤と格闘するうち、いつのまにか時間が経っている、なんて経験のある人も多いと思います。「我が子に集中力をつけさせたいから」という理由で将棋を始めさせる親御さんもいる。僕の両立の土台にもそういうのはあったかもしれないですね。

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