春風亭 一之輔さん(落語家)
ご両親の反応は
両親とはあまり喋らなかった(笑い)。東京に出ていましたしね。こっちから、落語家になる、ってもう一方的に。だから事後承諾に近いですね。
修業時代、苦労は
好きなことをしてるんだし、とくに大変と思ったことはなかったですね。うちの師匠は落語には珍しく放任主義で、あれこれ雑事をさせない。そんなことをしてる暇があったら、歌舞伎、映画なんでも見て勉強しなさい、稽古をしなさい、と言うんです。どうも先代以来の育て方らしいんですが、自由を良いことにボンヤリしようものなら、いま何を覚えてるんだい、ちょっとやってごらん――こうくるから気を抜けない。ですから自己管理は必要でしたが、そこはやりたくて入った世界ですからね。
志す落語の姿は
僕の場合は自分が喋っていて楽しいようにやっている感じですね。最近は若い人たちも客席に増えていますが、その人たちにもウケるように、ここをこう変えて、とか、構成を組み替えるとか、そういうことはしないです。あくまで自分が見る側ならこういうのが面白いだろう、というのを基準にする。ひとつひとつの基本を押さえたそのうえで、自分の感覚ならこのキャラクターはこうは言わないだろう、とか、こんなことを言いそうだ……とかね。だから若い人やトレンドに合わせるよりは、こんな感じなんですけどどうですかね、と提案するイメージですね。
古典落語再現に難しさは
落語はあくまでも大衆芸能ですから、ものによっては、どうしても時代に合わなくなってしまえばそれは淘汰されてしまうでしょうね。客席の反応が薄くなると、やっぱりみんなやらなくなっちゃう。