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朱野 帰子さん(作家)

見方によれば良い病気とも

 本人はそうなんですけど……、そうはいってもやっぱり日常生活に支障がある。まず近眼が悪化する。いまは軽くて扱いやすい眼鏡がたくさん増え、近眼の対処も楽ですが、当時は大ごとです。大学病院まで連れていかれ、虫眼鏡のように重くて大きい眼鏡をかけることになる。3者面談では、「いったん本を読みだすと学級文庫の棚全部を読み終えるまで外に出ない。ちなみに今は2周目です」と先生が母に報告しなければならず、かなり人間関係や共同生活に支障をきたしていました。

そのころお勉強の調子は

 授業中は教科書をずっと読んでいました。算数はダメでしたが国語は得意でしたね。あとこれは活字好きの子にはわりとあることだと思うんですが、やっぱり教科書は配られるとその場で全部読んでいました。

当時の習い事や交友関係は

 そんな調子ですから親が心配したのか、スイミングとか結構運動系のところに無理やり入れられて。それで仕方なくやるんですけど、当人にとっては本当に無駄というか……、つらいばかりで。友達と遊んでいるときもあまり面白くない。友達の家で本棚を見ると、その瞬間に意識が飛んでしまって、気づくと本を読んでいる。一緒に来た友人たちはみんな帰ってしまって、次の誘いの声は2度とかからない。いま考えると、そのころの自分がヤな奴にも思えます。人の家に呼ばれて本ばかり読んで……。そんな生活が中学ぐらいまで続いた。

中学時代の興味の中心は

 さすがに中学生になるとそこまで本一辺倒ではなくなってくる。でもそうすると今度は、それまで人間関係をサボってきたツケが出てくるんですよね。コミュニケーションをとろうにも一方的というか、つい自分の好きな本の話を延々としてしまう。でもわたしが住んだ地区は昔ながらの商店街が立ち並ぶ下町のような土地柄で、通う中学校もほとんどが本よりも運動好きな生徒だった。本を読んでも話す相手がいないんです。誰ともかみ合わず、話す相手がいない苦痛の時間。中学時代はそんな暗黒の3年間でしたね。

そのころの読書は

 なんでも読みました。シャーロックホームズだったり、児童文学的なものの有名どころは大体読んで。母親がノンフィクション好きだったのでそれも読みました。少し変わったところでは偉人伝のようなものも。これはいまでもわりとよく読みますね。

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