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柄本 佑さん(俳優)

実弟・時生さんとの芝居は

 あれは、「ホーム」というか。自分たちで、お金を出し合って、ノルマを決め、演劇をやる。仕事がないときは、本当になくて、平気でひと月半なんて空くんです。そういうときに帰れるホームがあった方がいい。そんなところで、時生と話し合い、芝居もやってみようか、と始めた。そうすると、逆に、「よっしゃ、時間が空いたから芝居やろう」とかなって。そうして自分の帰る場所がある、というのは何か大事かな、と思います。時生とは単に「仲の良い兄弟」というよりは、どこか「同士」のようなところがあって。近すぎず遠すぎず、距離感が丁度いい。だから、この「ホーム」は居心地は悪くない。大事にしていきたいですね。

ご両親の影響は

 それももちろんあると思います。が、なにより大きかったのは、その劇団員のお姉ちゃん、お兄ちゃんたちを見ていて、それが何か漠然とだったけど、楽しそうに見えたこと。だから、演劇を作ることに対する憧れのようなものはずっとありますね。

『アルキメデスの大戦』について聞かせてください

 主人公を補佐する海軍将校・田中を演じるとあって、海兵の1日体験をさせてもらったんです。「君の演じるのは〝こういうこと″を何年もしてきた人なんだよ」というわけです。そんな海軍を下敷きにしたバキバキに厳格な人柄が、主人公・甲斐に影響され、少しずつ人間味を帯び始める……。そんな役を表現するには、とにかく、まず、海軍をしっかり体現できないといけない。そういう意味では、その1日体験が、しっかり役どころを掴む上で大きかったですね。

おススメの場面は

 最初のVFXのシーンもいいですし、田中と甲斐少佐のやり取りも見所なんですが、一個人として「スゲエなあ」と思ったのは、やっぱり、最後の大会議室の格闘シーンですね。沢山の言葉が飛び交う中、甲斐少佐の手が淀みなく動き、黒板を数式で埋めていく……。非常に見応えある場面です。そして、あれを菅田さんは理解して書いている。だから、たまに間違えると、「数字が違ってる」って。あそこ計算間違ったんだよなあ……、って首を捻る。そんなところも楽しんで見ていただければと思います。

えもと たすく 1986年、東京都生まれ。2001年、映画『美しい夏キリシマ』(2003年公開)の主人公少年役のオーディションで合格。同作で第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第13回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。その後の映画主演作に『17歳の風景~少年は何を見たのか』(2005年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』『きみの鳥はうたえる』『ポルトの恋人たち 時の記憶』(以上、2018年)など。2019年、毎日映画コンクール、キネマ旬報ベスト・テン、日本映画批評家大賞でいずれも主演男優賞を受賞。最新出演作『アルキメデスの大戦』が7月下旬より公開。

(撮影:編集部)

(月刊MORGENarchives2019)

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