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真藤 順丈さん(小説家)

それにしてもデビュー時の4作同時受賞は驚異的です

 そうですね。でも、あんなに一気に書けたのはそのときくらいですね。あの頃は、もう、ひと月に一本くらいのペースで書いていた。我ながら「スゲーなあ」と思います。でも今は、一作書くにも凄く苦労して作っていますよ。

多彩なジャンルの秘訣は

 大抵の一線級の作家のみなさんは、マルチな作風を同時に動かされています。歴史小説を書いていたかと思えば、現代ミステリーを書いたり、SFだったり……。特段、僕がどうということはないと思いますよ。僕の場合、色々書いても、向き合うときは常に一対一なので、なかなか「マルチタスク」という感じにはならない。そういう意味では、僕なんかまだまだだと思います。

好きな作家や作品は

 海外の小説を読むことが多いですね。コーマック・マッカーシーだとか……。国内の本も、話題の本は必ずチェックして読むようにしています。ほかにも、この人のものは新作が出れば読む、という方は何人かいますね。でも、最近は忙しさもあって余り本を読めない日が続いているんです。これじゃあイカンな、と。やっぱり、本を読まないと書けないですから。本当は、書いた分だけ読むくらいじゃないといけない。読む量が足りないと筆が細りますからね。

今の一日のルーティンは

 専業なのでどうしても崩れがちですが、基本的には夜型ですね。夜書いて、朝家事をこなして休んで……、という感じです。

『宝島』について聞かせてください

 よく「この作品にどれだけかかったか」と聞かれると、いつも「構想7年執筆3年」と答えます。厳密には、中断期間もあったので、もっとかかっていますね。中断中は、宝島のプロットを見直したり、史実を深めるため取材をし直したり。とにかくこの本と向き合って過ごしました。戦後の沖縄の流れを、できる限り丁寧に、要所を押さえて書いています。史実としても、かなりの確度があると自負しているので、そのときあの場所で何が起こったのかを知る上でも、参考にしてもらえればと思います。

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