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笠井 信輔さん(フリーアナウンサー)

大学時代はどんな風に

 そんな地獄の浪人生活を突破して早稲田に受かったもんだから、大学に入ってからすぐはもう遊び呆けてましたね。スキーがやりたかったからと、スキークラブにも所属した。そんなとき、小学校高学年のときの恩師に挨拶に行ったんです。多感な時期にガッツリお世話になったこともあって、先生とは以前から親しくする間柄だった。丁度ゴールデンウィークだったので、合格の報告にと伺ったわけですが、そのとき先生に「今何してるの?」と聞かれた。「スキークラブに入りました」なんて言うと、「信輔何やってんの?」と急に気色ばんで、「あなたテレビ局入ってアナウンサーになりたいんじゃないの」というわけです。「まあそれもあるけれど、遊びたいんです」と返すと「あなた何のために早稲田に入ったの。放送研究会なんてまさにテレビ局直結の所に入れる立場になったのに何をやってるの。今からでもいいから放送研究会に入りなさい」と言われたんです。こっちはビックリですよ。なにしろ遊ぶことで頭が一杯だったし、あんまりイメージもなかったんで。ただ、普段怒ったりしない先生があんまり言うもんだから、ありゃあ……、と思ってね。それでゴールデンウィークが明けるとすぐに放送研究会に入ったわけですが、それがやっぱり凄く大きかった。そこがアナウンサーになる上で、一番大きな節目でしたね。

『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』を通して一番伝えたいことは

 この本は、ぜひ若い人たちにも読んで貰いたいと思っていて。というのも、自分自身が癌になるという風に思っている人って本当に少ないんです。でも実際には今は二人に一人は癌になる時代で、もし4人家族ならそのうちの誰かがかかる確率は9割にも上るわけですよ。毎年100万人が癌を発症し、そのうち4割近くが亡くなっている。そう考えたら、やっぱりそこへの備えっていうのは必要だと思うんです。でもそれをうちの子たちに話すと、「いやァ、そんな風にはあんまり考えられないな……」というんですよ。後でそれを妻に話してみたら、「そんなに若いうちから癌になるかもしれないなんて思って暮らしてたら悲しすぎるし、私だってそうよ」って。

 それは誰しも癌になんてなりたくないし、もちろんそれは分かるんだけど、そこはやっぱり現実として、どこか心構えとして持っておかないと、私みたいにうろたえてしまうわけですよ(笑い)。「うおーっ、なんで俺が今癌にならなきゃいけないんだ」ってね。答えは簡単で、日本人の二人に一人は癌になるから、なんです。もう一つ挙げると、自分の父母や祖父母がかかる確率も極めて高いので、そうした意味でも日頃からどこか覚悟はした方が、いざというときショックを受けすぎないで済むと思うんです。なんでうちの親が……、じゃなくて、あ、やっぱりなるんだな、と受け止めた方が、だったらどうするか、という次のステップを踏みやすい。そんなことを自分で体験してみて伝えたいと筆を執りました。

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