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菊間 千乃さん(弁護士)

弁護士の夢が動いたのは

 ちょうどその10年目にさしかかるころ、日本にはじめてロースクールができたんです。あるとき、番組でたまたま共演した弁護士の方がその推進派で、「ロースクールには夜間もある。菊間さんせっかく法学部なんだから行ってみないか」と声をかけられた。それが渡りに船だった。十年後は司法試験を――掲げた夢は、毎日の忙しく楽しい日常のなかで少しずつ埃をかぶり、埋もれかけていたんです。長いスパンの人生設計を見失いかけていた私は、その言葉に、ハッと我にかえった。この先、ずっと今のように一線で仕事ができる保証はない。それに現在のような再雇用制度もない当時は60歳で定年です。その点、弁護士には定年はない。夜間なら働きながらできるから辞める必要もない。よし、やってみよう、って。

今の十代にアドバイスを

 私は、大学は「早稲田」に、アナウンサーになるにも「フジテレビ」と決めていた。弁護士もそう。それで、なんで叶えられたかと言うと、たぶん、目標設定が早かったのと、具体的だったからだと思うんです。同じ目標を目指すにも、小学校3年からと高校になってからでは、それまでに興味を持って集積する情報量が圧倒的に違いますよね。夢を持ったらそれを周りに言うこと。そうすると周りが情報を集めてくれる。それを吟味してまた考える。もし何かに少しでも興味が湧いたなら、必ず具体的に掘り下げる。そうすれば、気付いたら中高が終わっていて何も見つからない、ということが少なくなると思います。へんに自分にリミットをかけずに、〝挑戦したい″というおもいを素直に表現していって欲しいですね。

きくま ゆきの 1972年、東京都生まれ。1995年早稲田大学卒業、同年株式会社フジテレビジョンに入社。アナウンサーとして活躍する傍ら、2005年大宮法科大学院(夜間部)に入学し、10年に司法試験に合格。現在は弁護士法人松尾綜合法律事務所にて、企業法務等を取り扱う。著書に『私が弁護士になるまで』(文芸春秋)、共著に『久保利英明ロースクール講義』(日経BP社)ほかがある。

(撮影:編集部)

(月刊MORGENarchives2017)

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