飯沼 誠司さん(プロ・ライフセーバー)
ライフセービングは救命救助を基調とした活動だ。特に水辺で威力を発揮する営為の重要性は、海洋王国・オーストラリアの国技であることからも明らか。近年は技術向上にと各種競技大会も広がりを見せる。アイアンマンレースで獅子奮迅、まさに鉄人の活躍を見せる飯沼誠司さんは日本人初のプロ・ライフセーバーだ。幼い頃から続けた水泳、英語……すべてが帰結したのは命の守護活動だった。普及、教育に命を燃やす心の地図を訊ねた。
小さい頃熱中したことは
小学生の頃は水泳とサッカーをやっていて、両方全国レベルで戦っていたんです。でも小学校5年生の時、そろそろどちらか選ぼうってなった。親に相談すると、自分で責任を持って決めなさいと言われて。じゃあ水泳にする。オリンピックに出たい! と目標を定めました。小・中と競泳ジュニアオリンピックの常連になり順風満帆。それが、半ば水泳の推薦で入学した日大鶴ヶ丘高校で壁にぶつかったんです。
高校でも変わらず水泳漬け。毎日7時間、20キロを泳ぎます。ところがそれだけやっても3年間で1秒しかタイムが縮まらなかった。1秒というと、ほんとに、5メートルもないくらい。インターハイのレギュラーを後輩に奪われ、自分は何のためにこれまで打ち込んできたんだと……。部活のあと疲れた体を押し込んだバスのシートから、見上げた車載時計の表示がたまたま目標タイムを刻むと、いよいよ激しく落ち込み、終点まで降りられず親が迎えに――なんてことも。1番楽しい事なんだけど、精神的には相当キツい状況でした。
水泳を辞めようかとは
3歳からずっと水泳をやってきたので、やめるという選択をすることでいろんな可能性が消えてしまうのは避けたかったんです。タイムは伸びなくても、とにかく水泳は続けていこうと。それが大学に入った時に「ライフセービング」という、かたちは違うけれども泳ぎを通して人の命を救ったり、海でのスポーツに向かうことに結実して――。あの挫折があったから、海など自然環境下でもブレずにやっていける、という気持ちになったのかもしれないですね。