中島 ノブユキさん（音楽家）

大学ではどんな学びを

　日大芸術学部には、優秀な人からユニークな人まで、多種多様な人種が、ざっくばらんに同居していた。彼らは決して反目することなく、むしろ積極的に融和する。そういう中から何かを生み出して行こう、という気運があるんです。それが、演奏、作曲……、なにか一つに絞っていくのには、向いていなかった自分と凄くウマが合った。

フランスに行かれます

　もともとフランスの音楽――ドビュッシー、フォーレル等の楽曲が好きというのもありましたが、ボサノバ、ジャズなどを編曲する時、フランス音楽のハーモニーやリズムに強い親和性を感じていた、というのがフランスに渡った一番の理由でした。とはいえ、渡仏の直接のきっかけは、サークルを通じて知り合った知人の何気無い一言だった。「中島君、絶対フランスの音楽合うよ。フランス行ったら」……どこまで本気かわからないその言葉に、でもなぜか、あっ、行ってみようかな、と思った。

音楽家になるきっかけは

　日本に帰ってしばらくした頃、音楽事務所と接点を持つ大学の後輩から、元JUN SKY WALKER(S)（ジュン・スカイ・ウォーカーズ：日本のロックバンド）の寺岡呼人さんがソロツアーのキーボーディスト(鍵盤楽器を演奏するミュージシャン)を探している、という話をもらった。オーディションを受けて合格すると、すぐに全国ツアーを廻った。同じ時期、Port of Notes（ポート・オブ・ノーツ）というバンドの鍵盤にも参加。このときのつながりは今も続いています。

これからの目標は

　まだオペラなどテキストものをやったことがないので、オラトリオ(独唱・合唱・管弦楽からなる宗教的大楽曲)をやりたいと思っています。舞台装置なしの言葉と音楽のドラマ――これをぜひやりたい。もう一つは若いときからのテーマで、『２４の前奏曲とフーガ』(ドミートリイ・ショスタコーヴィチのピアノ曲集)のスタイルで全曲書き下ろす。後は、いまジェーン・バーキンさん(フランスの女優・歌手)との仕事を続ける中で、フランスでの仕事の輪を広げ、また違った角度のコラボレーションが出来たら、と思っているんです。

なかじま　のぶゆき　1969年、群馬県生まれ。日本大学芸術学部卒業。日本とフランスで作曲を学ぶ。これまでに菊地成孔らに楽曲提供、持田香織、UA、畠山美由紀、ゴンチチらのサウンドプロデュースを手掛ける。近年ではフランスの女優・歌手ジェーン・バーキンのワールドツアーに音楽監督・ピアニストとして参加している。サウンドトラックに映画『人間失格』『悼む人』、アニメーション『たまゆら』、ＮＨＫ大河ドラマ『八重の桜』など。またソロアーティストとして『エテパルマ』など6枚のリーダー作を発表。

（撮影：編集部）

（月刊MORGENarchives2017）