真山 仁さん(作家)
『ハゲタカ』『マグマ』『コプラティオ』……。ヘッジファンド、国際エネルギー戦争、原子力村、どれも日本で表出以前、時代を先取った格好が話題をさらった意欲作だ。著者の真山仁さんは、いわずとしれた経済小説家の重鎮である。作品に通底する正義感、問題提起は氏のトレードマークだが、近年は政治、教育の現場にその旗印をひっさげ乗り込むことも多い。グローバリズム、3・11、混迷の日本でなお士気高い作家の十代を尋ねた。
小さい頃から早熟だった
早熟でした。親に説教してましたから。(笑い)親も嫌な顔してましたね。そういう子だと周りから浮いたのでは、と良く言われますが、そこは笑いの本場、関西人なので。工夫しながらうまくやっていました。とはいえ基本的によくしゃべる子で、生来理屈っぽい。大人の話を耳に入れては疑問を持つと、「それっておかしくないの」と横から口を出したり。小学校3年生ぐらいの頃からだったかな。
その頃の親子関係は
親がよく子どもに、「言われたことをちゃんとやりなさい」とか感情的になって色々しかるじゃないですか。そういうのに反発していました。親は子に感情的になっていいのか、おかしいじゃないか。そもそも、自分たちにだって出来もしないことを子供に期待して押し付けるのも大概だ、と。大体それでなぐられるんですけど。
ご両親は内心、頭の良い子だなと考えていたのでは
そうかもしれませんね。勉強のできるできないはべつにしても、地頭の良い子だなと考えていたのかもしれませんね。小学校5、6年生の頃からですが、学級会で決めごとが持ち上がる機会が増えたんです。先生が、今度こういうことをしようと思ってるんでルールをみんなで考えましょう、と切り出すと、すかさず私が、そもそもなんで先生、勝手に決めるんだ、と切り返すのがクラスの恒例で。「それが子供たちにとって本当にいいことかどうか議論させてほしい」こう言った。すると先生は、「それはいいことだからやりなさい」とうなづいて。こうしていつもの学級会が始まります。私が「こういうやりかたは良くないと思う」と試合開始のひとことを言い放つと、そこは面倒を嫌う生徒が大半の小学生。たちまち45人のクラスは、私対44人に分かれます。それを3、40分かけてひっくり返す。これだけ聞くとみんなに嫌われそうなものですが、学級会で特に対立するような相手ほど、放課後には仲良く遊んでいて。まあしたたかなものですね。