「野鳥と私たちの暮らし」都市部に進出した小型の猛禽 チョウゲンボウ

かつては数の少ない希少な鳥

 チョウゲンボウ(長元坊)と呼ばれるハトほどの大きさの小型の猛禽をご存じでしょうか(写真上:枯れ木の先にとまるチョウゲンボウの雌)。ユーラシア大陸とアフリカ大陸の各地に分布し、日本では本州中部から北部で繁殖し、冬期には寒冷地のものは南に渡るので、日本各地で見られる猛禽です。ハヤブサ科の鳥ですが、ハヤブサがカラスほどの大きさに対し、ずっと小型です。雄より雌の方がやや大きく、雄の頭と尾は青灰色に対し、雌の方は褐色気味な点、また雄の背中は赤色がかった褐色なので雌雄の区別ができます(写真下:雄(右)が捕えてきた餌を雌が受け取る)。

 農耕地、川原などの開けた環境で餌を捕り、崖の窪みや大木の樹洞、さらに最近では橋や鉄橋の穴、ビル等の建物の屋上にも営巣するようになった猛禽です。電柱の上などから地上のネズミ類、スズメなどの小鳥類、バッタなどの昆虫類を狙って捕える他、ひらひらとゆっくり飛びながら時々ホバリング(停空飛翔)と呼ばれる空中に停止した状態からこれらの獲物を狙って捕えます。最近では比較的身近な猛禽なのですが、以前には数の少ない希少な鳥でした。

集団で繁殖する猛禽

 1953(昭和28)年に長野県中野市にある十三崖のチョウゲンボウ集団繁殖地が国の史跡名称天然記念物に指定されました。十三崖は、高社山のすそ野を夜間瀬川が侵食してできた東西約1,500m、最も高いところでは高さ30m以上ある垂直の崖です。この崖にある穴に指定当時は20つがいほどのチョウゲンボウが繁殖していました。

 猛禽類は一般につがいごとに広い行動圏を持ち、その範囲全体をなわばりとして防衛しています。それに対し、十三崖のチョウゲンボウは、巣穴の周りの狭い範囲をなわばりとして防衛し、餌はそこから離れた場所に出かけて捕る生活をしていたのです。スペインなどの外国のチョウゲンボウも集団で繁殖する例が少数確認されていますが、これほど多数の個体が集団で繁殖する例はないことが指定の理由でした。

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