「清々しき人々」命令に違反して多数の人命を救済した 杉原千畝

 一九八五年には多数のユダヤ人の生命を救出した功績で、イスラエル政府が「自身の生命を危険にしながらユダヤ人を救済した正義の非ユダヤ人」を顕彰する「諸国民の中の正義の人」として杉原を顕彰しました。このような国際社会の行動を背景に日本政府も二〇〇〇年に杉原の名誉を回復し、当時の河野洋平外務大臣が「ナチスによるユダヤ人迫害という極限的な局面で人道的で勇気のある判断をされた」と演説をしています。

 外国でも様々な顕彰活動が登場します(図4)。一九九一年にリトアニアがソビエトから独立したときには、杉原が勤務していた日本領事館の前面の大通りを「スギハラ通り」と命名、イスラエルではユダヤ民族の恩人を顕彰して杉を植樹した森林公園を建設しています。現在でも国家の方針に反抗するには勇気が必要ですが、社会が緊張している戦争直前に政府や軍部の意向に反抗した杉原の人道重視の勇気は素晴らしいものでした。

図4 リトアニア発行の切手(2004)

つきお よしお 1942年名古屋生まれ。1965年東京大学部工学部卒業。工学博士。名古屋大学教授、東京大学教授などを経て東京大学名誉教授。2002─03年総務省総務審議官。これまでコンピュータ・グラフィックス、人工知能、仮想現実、メディア政策などを研究。全国各地でカヌーとクロスカントリーをしながら、知床半島塾、羊蹄山麓塾、釧路湿原塾、白馬仰山塾、宮川清流塾、瀬戸内海塾などを主催し、地域の有志とともに環境保護や地域計画に取り組む。主要著書に『日本 百年の転換戦略』(講談社)、『縮小文明の展望』(東京大学出版会)、『地球共生』(講談社)、『地球の救い方』、『水の話』(遊行社)、『100年先を読む』(モラロジー研究所)、『先住民族の叡智』(遊行社)、『誰も言わなかった!本当は怖いビッグデータとサイバー戦争のカラクリ』(アスコム)、『日本が世界地図から消滅しないための戦略』(致知出版社)、『幸福実感社会への転進』(モラロジー研究所)、『転換日本 地域創成の展望』(東京大学出版会)、最新刊「AIに使われる人 AIを使いこなす人」(モラロジー道徳教育財団)など。モルゲンWEBの連載「清々しき人々」とパーセー誌の連載「凜々たる人生 ─ 志を貫いた先人の姿 ─」からの再編集版として、『清々しき人々』、『凛凛たる人生』、『爽快なる人生』(遊行社)など。

(モルゲンWEB2024)

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