「清々しき人々」旅行日記の秀作を発表した 井上通女(つうじょ)

当時から評価されていた女性 

 丸亀に帰郷してから藩士の三田宗寿茂左衛門と結婚し、三男二女が誕生しました。五一歳になった一七一〇年に主人の宗寿が死亡し、そのときの気持ちを「いずくにか/あまがけるらん/夢にだに/見ること難き/魂のゆくすゑ」と追悼しています。以後は儒者として活躍する末子の三田義勝を育成しながら文芸活動を継続し、一七三八年に七八歳で死亡しました。当時としては相当の長寿でした。

 現在では、それほど有名ではありませんが、通女が執筆した『東海日記』『江戸日記』『帰家日記』の三冊は「江戸日記の粋」と評価され、貝原益軒は平安時代の有智子内親王(うちこないしんのう)以来の学富才優と評価しています。また伴蒿蹊が世間で話題の一〇〇余名の人物を紹介した一種の人名辞典『近世畸人傳』(一七九〇)には、井上通女が「詩歌ともに成人にまされる才女」と紹介され、当時はそれなりに話題の人物でした。

つきお よしお 1942年名古屋生まれ。1965年東京大学部工学部卒業。工学博士。名古屋大学教授、東京大学教授などを経て東京大学名誉教授。2002─03年総務省総務審議官。これまでコンピュータ・グラフィックス、人工知能、仮想現実、メディア政策などを研究。全国各地でカヌーとクロスカントリーをしながら、知床半島塾、羊蹄山麓塾、釧路湿原塾、白馬仰山塾、宮川清流塾、瀬戸内海塾などを主催し、地域の有志とともに環境保護や地域計画に取り組む。主要著書に『日本 百年の転換戦略』(講談社)、『縮小文明の展望』(東京大学出版会)、『地球共生』(講談社)、『地球の救い方』、『水の話』(遊行社)、『100年先を読む』(モラロジー研究所)、『先住民族の叡智』(遊行社)、『誰も言わなかった!本当は怖いビッグデータとサイバー戦争のカラクリ』(アスコム)、『日本が世界地図から消滅しないための戦略』(致知出版社)、『幸福実感社会への転進』(モラロジー研究所)、『転換日本 地域創成の展望』(東京大学出版会)、最新刊「AIに使われる人 AIを使いこなす人」(モラロジー道徳教育財団)など。モルゲンWEBの連載「清々しき人々」とパーセー誌の連載「凜々たる人生 ─ 志を貫いた先人の姿 ─」からの再編集版として、『清々しき人々』、『凛凛たる人生』、『爽快なる人生』(遊行社)など。

(モルゲンWEB2024)

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