「野鳥と私たちの暮らし」身近な冬鳥 アトリ

橙色の喉と胸をした冬鳥

 アトリ(花鶏)は、冬の時期に見られる喉と胸が橙色をした小鳥で、大きさはスズメよりやや大きい程度です。雄は繁殖期には頭部が黒いのですが、冬の時期には雌のよう黒と灰色のまだら模様になります。雌は雄に比べて黒や橙色が薄いので、冬の時期でも雌雄の区別ができます(写真上:冬羽のアトリの雄。写真下:雄より色がやや薄い雌)。

 アトリの分布は広く、ユーラシア大陸北部から樺太にかけての亜寒帯針葉樹林で繁殖し、冬には北アフリカの他、ヨーロッパから中央アジア、中国、朝鮮半島、日本に渡ります。日本に訪れるのは、シベリア方面で繁殖する集団で、日本全国で見ることができます。市街地の公園などでも見られ、日本では最も身近な冬鳥です。

 庭などに設置した餌台にもよく訪れ、ヒマワリの種やヒエ、キビなどの種子を好んで食べます。

 アトリの名の由来は、集まる鳥(あつとり)がなまったものと言われています。また、紅葉を終えて葉が落ちた木に群れで止まる姿が、木に花が咲いているように見えることからアトリは「花鶏」と書かれ、秋の季語にもなっています。

晩秋に大群で訪れる

 アトリが大陸から日本海を渡って日本に本格的にやってくるのは、紅葉がほぼ終わった晩秋です。渡来する数は年により違いますが、渡来当初、多い年には数千から数万羽の大群を標高の高い山地で見ることができます。

関連記事一覧