「野鳥と私たちの暮らし」ツバメ家屋に移り住んだ益鳥 ツバメ

繁殖を終えた夏の終わりには集団で塒

 ツバメの顕著な習性として、繁殖を終えた後に地域一帯のツバメが夜にはヨシ原に集まって、集団で塒をとる習性があります。古くから日本各地の河川や湖沼の周りにあったヨシ原は、繁殖を終えたツバメに夜を安全に過ごす場所を提供してきました。現在でも8月の最盛期には、数千から数万羽のツバメが集まって夜を過ごす集団塒が各地にあります。

 しかし、最近では開発により多くのヨシ原が失われており、そのことがツバメの生息数に影響していることが懸念されます。かつては、ヨシは葦簀(よしず)などに使われ、人の生活に密接な存在でしたが、最近はほとんど使われなくなり、長い間行われてきた春先のヨシ原の火入れは、今はほとんど行われなくなりました。ツバメは益鳥であるという認識は、最近では薄れてしまっているように思えます。

益鳥とされ人に依存し、したたかに生きる

 弥生時代以後から家屋に住み着いたと考えられるツバメは、その後の家屋の構造や形態の変化に合わせながら営巣する場所を変えつつ、人の生活へ大きく依存することで、今日まで栄えてきた鳥です。近年の大きな変化は、アルミサッシの窓や戸の普及により、ツバメにとって天敵から安全な屋内での営巣が難しくなってきたことです。

 以前には、農家の土間といった屋内での営巣も多く見られ、土間の入り口の戸には、ツバメが出入りできる穴が用意されていました。それが、最近ではアルミサッシの普及で、ツバメの屋内での繁殖はほとんど見られなくなっています。また、牛や馬が飼育されていたころには、開放的な構造のこれらの飼育舎がツバメの営巣場所として好まれていました。

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