「野鳥と私たちの暮らし」春の訪れを告げる身近な鳥 ヒバリ

飛びながらさえずってなわばり宣言

 ヒバリ(雲雀)は、スズメよりやや大きな地味な鳥です(写真上:地上での生活に適応し、地味な姿と長い爪を持つ。下:菜の花畑をバックに地上でさえずるヒバリの雄。)。畑や河原などの開けた環境に棲み、背の低い草がまばらに生えた環境に適応した鳥です。アフリカ大陸北部からユーラシア大陸に広く分布します。日本では、北海道や東北など雪の多い地域では冬に暖かい地域に移動しますが、多くの地域では年間を通して見られる留鳥です。

 地上で過ごすことがほとんどですが、雄は春の繁殖期には空高く舞い上がり、飛びながら長時間にわたってさえずります。開けた環境では、とまってさえずる高い場所がないので、空に舞い上がり飛びながらさえずることでなわばりを宣言する「揚げ雲雀」と呼ばれる行動を進化させました。万葉の時代から詩歌に詠まれてきた身近な鳥で、日本では古くからのどかな田園風景を思い起こす春の風物詩となってきた鳥です。

草の根元に営巣

 ヒバリの生活は、信州大学の学生であった当時の小渕順子さんが卒業研究として長野県の小諸市で1960年代に調査しました。それによると、この鳥は早い年では2月末からさえずりを始めます。3月中旬には多くの個体が繁殖活動を開始し、さえずりの最盛期は4月下旬から5月上旬でした。飛びながら空高くさえずるだけでなく、地上でもさえずることも多く、その割合は時期が遅くなるほど多くなっていました。

 4月中旬から巣作りが始まり、巣は草むらの中の地上に枯れ葉や根を使って丸く造られます。産卵数は4卵が最も多く、次は3卵でした。巣を造り、卵を温め、孵化したばかりの雛を温めるのはすべて雌の仕事です。雄はこの間、多くの時間をさえずりまたはなわばり防衛をしていました。卵は、最初の卵が生まれた日から温められますが、全部の卵が孵化するには13日~14日間かかりました。雛が孵化すると、雄はこの時から子育てを手伝い、巣に餌を運んできます。しかし、雄が巣に餌を運んできた回数は、雌の三分の二ほどでした。

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