「野鳥と私たちの暮らし」サルの顔のように赤い鳥 ベニマシコ

 オガサワラマシコの標本は、1827年にイギリス人が採集した2羽と翌1828年にドイツ人が採集した9羽の標本があるのみです。いずれも外国の博物館に所蔵され、日本にはありません。東洋のガラパゴスとも呼ばれる小笠原諸島には、この島にしかいない固有種が多いのですが、鳥ではこの他にオガサワラガビチョウとハシブトゴイが絶滅しています。日本で絶滅した鳥15種のうち、3種が小笠原諸島に生息していた鳥なのです。

 最も大きな嘴を持つオガサワラマシコが、この亜熱帯の島でどんな生活をしていたかは、永遠に知ることが出来なくなってしまいました。

ハマナスの花の時期に繁殖

 ベニマシコに話を戻しますが、私がこの鳥を調査したのは、20歳代の後半でした。当時、京都大学の大学院でカワラヒワを研究していた私は、京都での繁殖調査がほぼ終わった6月から、北海道の小清水原生花園に2年間にわたりそれぞれ1ヶ月間ほど出かけ、調査したことがあります。

 小清水原生花園は、オホーツク海に面したハマナスなどの低木と草原で覆われた海岸にそって細長く続く砂丘で、雪解け後の6月からエゾスカシユリ、エゾキスゲ等が一斉に花を咲かせ、賑わいを見せます。ここでは、京都より3ヶ月遅いこの時期からカワラヒワの繁殖が始まっていました。

 この小清水原生花園には、カワラヒワの他にノビタキ、ノゴマ、シマアオジなど多くの種類の鳥とともにベニマシコも繁殖していました。冬を温かい地域で過ごした多くの鳥が一斉に戻って繁殖を開始し、活発に飛び回っていました。

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