「野鳥と私たちの暮らし」身近な鳩 キジバト
なぜ白い卵を産むのか
キジバトの繁殖で、私が以前から疑問に思っていることが1つあります。それは、キジバトの卵は真っ白であることです。真っ白な卵は、フクロウ、ブッポウソウ、オシドリなど樹洞で繁殖する鳥に共通した特徴です。親鳥にとって、暗い樹洞の中で白い卵は目立ちますので、都合が良いからなのでしょう。しかし、キジバトの卵はその必要はなく、白いとかえって目立ち、捕食者に発見されやすいと考えられます。ですので、樹上や地上に巣を造る多くの鳥では、目立たない色の卵を産むか、あるいは斑点や斑紋といった模様を付けて目立たなくしています。
キジバトが白い卵をなぜ産むのかについての私の考えは、この鳥は夜間には雌が抱卵し、日中は雄が抱卵することと関係があると考えています。巣を開けるのは1日に2回のみですので、巣を留守にする抱卵交代の時間は短時間なのです。ですので、他の鳥のように捕食者から卵を目立たなくする必要性がなかったためではないかと考えています。
ピジョンミルクで子育て
雛が孵化した後は、さらに15日間ほどかけて雌雄で雛を育てます。キジバトを含むハト科の鳥類の子育てで大変ユニークな点は、ピジョンミルク(そのう乳)で雛を育てる点です。「そのう」とは、食べた餌が胃に入る前にいったん蓄えられる器官です。ピジョンミルクは、そのうの内壁の細胞から分泌されるミルク状のもので、たんぱく質、ミネラル、ビタミンが多く含まれています。
雛が孵化する直前から親鳥のそのうでは、ピジョンミルクが作られはじめ、生まれた雛は、孵化後1週間程度は、ピジョンミルクだけで育ちます。その後一週間たつと、親鳥はピジョンミルクと共に種子などの餌も一緒に与えるようになります。