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室谷 義秀さん(パイロット)

練習場不足など難しい状況もあったと思います

 そうですね、国内ではなかなか飛べないので。トレーニング環境がないので、ここ(ふくしまスカイパーク)が出来て――1998年にできてやっと。山沿いで広いところなんでトレーニングするのは抜群ですし。旅客機飛んでる訳ではないので、非常にわれわれにとってはいい環境で。拠点にしようということで決めて。それまでは茨城とか、空港があるんで手伝いに行ったりしながら、飛行経験を切らさないように。まあアクロバットとまではいかないですけど。

一番苦労されたのはどういう部分でしょうか

 競技で言うと、競技飛行という世界で、世界選手権とかがあってですね、強い国はトレーニングのシステムが確立してます。トレーニングの機材があり、練習に適した環境があり、コーチがいたり、審判団がいたり。それからスポンサーとかそういう、サポートしてくれる国の組織があったり。普通の競技であれば、ともかく選手は選手なんで、競技に集中できるわけですね。それ以外の事は周りがサポートする中で世界と戦うんですけど、そういう概念もなにも無く、自分の前には誰もいないという世界で、場所作りからコーチまでともかく全部、すべてを1から作らなきゃいけないので。とにかくきわめて時間がかかった。理解を得るというよりは、自分が前に進むために環境を作る必要があった。

現在日本の競技人口は

 出る選手は15人とか。機体の問題で出れない人もまだ多いんですけども、ミーティングすると60人くらい集まるんで、そこに来ない人もいるとして……まあやっぱり100人ぐらいは少なくともいるだろうと思っていて。とはいっても100人だけですから、もうちょっと子供の時からスカイスポーツを知ってもらえるようにできればと。競技までいくとなかなかハードルが高いですから、ふわりと浮く体験だとか。そういった体験を通して幅広い層に空の世界を知ってもらう、そういう活動を続けています。10年くらいやっていれば、エアレース、航空レースにでてくる人が出てくるかなと。

エアレースの魅力は

 エアレースはスポーツパイロットとして世界選手権を戦ったトップがレースをする訳ですけど、そこのね、パイロットとしてのきわめて狭い範囲の中での戦いで――機材、機体、テクノロジーの戦い。それからレースは単純にタイムだけを競いますから、人とマシーンが力を合わせて判定される、きわめてソリッドに評価されるわけですね。曲技飛行とかだとフィギアスケートみたいに審判がいて審査されるので、ほんの少しこう、揺らぐ瞬間があるんですけど、時間は揺らがないので。100分の1秒、1000分の1秒にすべてが出てくるので。それが自分の楽しみ、競技者としてのやりがいだと思います。

むろや よしひで 1973年、神奈川県出身。中央大学文学部卒業。93年、渡米し飛行機操縦ライセンスを取得。97年よりエアロバティックス飛行の本格訓練を開始。以後、自身のチームを率いて国内の航空ショーやレースに継続参加。2003年、航空文化啓蒙や青少年教育活動を推進するNPO法人ふくしま飛行協会を設立。09年よりレッドブルエアレースに参戦し、15年度成績は総合6位。また13年の世界曲技飛行選手権ではフリースタイル入賞を果たす。

(月刊MORGENarchive2016)

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