松坂 大輔さん(元プロ野球選手)

 2021年10月19日、一人の偉大な投手がピッチを去った。晩年は怪我に苦しんだものの、「平成の怪物」の勇姿は、ファンの脳裏に力強く刻まれている。本誌に松坂さんにご登場いただいたのは、2002年の暮れのこと。まだ学生の残る初々しい笑顔が印象的だった。記憶に焼き付いた多くの活躍と、感動を呼んだプレーに敬意を評して、Memorial archiveの第一回にピックアップする。

人との出会いがその人の人生を動かす力になる

 どういうわけかプロの選手になるということだけは、小学校のころから考えていましたね。だからぼくは毎日学校が終わると壁にボールを打ちあてて遊んでいたんです。ぼくらのころはサッカーが盛り上がっていて、友だちはみんなでサッカーに夢中になっていましたね。誰でも子どものころはみんな夢中になるものがあると思うけど、僕は夢としてプロの選手になりたいというレベルで野球に夢中になっていたんじゃないんですよ。なぜか堅い決心のようなものがあったんですよ。いま考えるとおかしなぐらいですけど(笑い)。

 でも誰でもそうだと思うけど、だんだん自分が成長する過程で自分の本当の力がわかって途中で夢をあきらめてしまったりするわけでしょう。ぼくの決心が揺らぐことがなかったのは、ぼくが成長する過程で、いい指導者に恵まれたからなんです。ぼくが伸びる時期に合わせてタイミング良くぼくの力を引き出すような指導をしてもらえたからなんですね。その意味では本当に幸運だったし、人との出会いがその人の人生を大きく変える力になると実感しています。本当にぼくは環境に恵まれたなかでここまできたんです。プロの選手になったいまでも、本当にいいコーチといいチームメートに恵まれていい環境で野球をしてこられたな、と思いますから。

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