松坂 大輔さん(元プロ野球選手)

目標に向かって進むためにはやらなければならないことがある

 甲子園が終わるころからマスコミがうるさくなって、友人関係で不自由になったのではとよく言われますが、それがまったくなかったんです。報道人が学校に来るようになっても、ぼくにとって友達の態度は変わることはなかったし、ぼくも野球を中心にものを考えていたので、あまり報道人には関心がないというか(笑い)。でもありがたかったのは、周囲の友達が以前と同じようにぼくにたんたんとしていてくれたことです。もちろんプロになったいまも友だちとの関係は同じように続いています。時々友だちが球場に試合を見にきてくれますし、そんなときもあいかわらず変わらないね(笑い)とお互いに言いますね。

 プロ野球選手以外の仕事は考えたこともありませんね。ずーっと野球に集中してここまできてしまったんです。ですから他のことはまったく考えなかった(笑い)。もし野球がだめだったらと、一度も考えたことがなかったんですからね。だから、周囲の人が進路を真剣に考える時期になってもぼくはますます野球に集中していきましたね。それはぼくにとってとても自然なことだったんです。でも親は勉強を適当にしかしない子どもを見ていて心配していましたよ。親にとってはプロの世界は簡単に入れるような世界には思えないわけですから当然ですよ。それよりもとりあえず勉強をしないと息子の将来が見えてこないわけです。それで心配で「勉強しなさい」とうるさく言われましたね。だから一時期は親に反発していましたよ。でもその分野球の練習はしたんです。いままでで一番練習したのが高校三年のときですかね。

 ぼくは練習は嫌いです。大嫌いです。でも自分の目標に向かって進むためにはやらなければならないことがあるんだと思うんです。だから、それから逃げるのは嫌いなんです。辛いことから逃げ出すことは簡単だけど、その辛さに向かって挑んでいってこそ多くのものが手に入るんだと思うんです。ぼくがこんなふうに考えられるようになったのは、高校二年のときに不本意な負け試合をして、この悔しさが、嫌いな練習に飛び込ませる自覚を与えたような気がします。それと人間として一番影響を受け尊敬する高校のときの監督のおかげですね。

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