「野鳥と私たちの暮らし」砂礫地に営巣する コチドリ
砂礫地で目立たない保護色
コチドリは砂礫地では見事な保護色の鳥です。大小の礫が一面に敷き詰めた裸地でじっとしていたら、周りの環境の溶け込んで見つけ出すことは難しく、動かない限り見つかりません。親鳥の姿そのものが砂礫地で目立たない保護色なので、裸地であっても巣に座り卵を温めていてもカラスなどの捕食者から安全なのです。保護色であるのは、親鳥だけではありません。巣の中の卵も小石とそっくりなのです。
そのことを、コチドリ自身が良く知っているのでしょう。人が巣に近づくと、30mほど手前まで来た時に巣からそっと離れます。巣を離れても、卵は保護色なので巣が見つかることはないことを知っているかのような行動です。
調査のための巣探し方法
現職の頃、信州大学の植物や動物などの様々な専門分野の先生方と共に、千曲川河川生態学術研究会を組織し、千曲川の総合調査を長年にわたり実施しました。私の担当は河川に棲む水鳥の調査でした。この調査では、多くの種類の水鳥の生態を研究室の学生と共に調査しましたが、コチドリもその研究対象でした。コチドリの調査では、上記のこの鳥の性質を利用し、調査地内のすべての巣を見つけることができました。
砂礫地を歩き、巣から離れて歩きだすコチドリをまず探します。コチドリを見つけても、その場所にすぐには行きません。この辺だと思って探しても巣は簡単には見つからないからです。ですので、コチドリを見つけたら、急いでその場から50m以上離れた場所まで戻り、草地などに身を隠し、コチドリの様子を双眼鏡で観察します。コチドリは、しばらくすると巣に戻って来るからです。歩いて戻り、座り込んだ場所が巣です。その場所を、目印になりそうな周りの石をしっかり覚えて確認してから、真っすぐにその場所に向かい、再びコチドリが立ち上がり、歩き出すのを確認して巣を発見します。鳥の調査は、鳥と人との知恵比べでもあるのでます。