「野鳥と私たちの暮らし」冬の訪れを告げる ジョウビタキ
別荘やリゾート地で繁殖
日本ではどのような環境でジョウビタキが繁殖を開始しているのでしょうか。その様子については、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳とその周辺での2010年から8年間にわたる調査で明らかにされています(山路・林 2018)。それによると、この間この地域では64か所で繁殖が確認され、それらの標高は最も低い場所で870m、最も高い場所は1760mで、特に1,500m~1,600mに多かったのです。繁殖が確認された場所の周りの環境は、住宅地が1例あったほかは、すべてが別荘地とリゾート地でした。営巣していた場所は、家屋の換気扇フードなど、すべてが人工物であり、巣の地上高は2m前後でした。
中国では、林縁部の田畑、河川敷、住宅周辺で採食し、樹洞、崖、石垣の隙間などに巣を造り、稀に林縁部にある住宅の軒下にも営巣するとのことです。それに対し、ソ連のハバロフスク市の近郊やウスリー川下流の盆地では、ほとんどの巣は家屋の窓枠の陰、ツバメの古巣、別荘の棚の上などの人工物を利用しており、日本での営巣とよく似ていました。
変化する鳥の分布
鳥を含め動物は、種類ごとに限られた分布域を持っていますが、それは不変のものではないのです。日本では、ハクセキレイはかつて北海道や東北地方などのみで繁殖していましたが、20世紀後半より繁殖地を関東や中部地方へと広げ、現在では東日本では普通種になっています。
日本でのジョウビタキの繁殖は最近急激に広がっていることから、ハクセキレイと同様に今後多くの地域で留鳥となってゆくことが予想されます。しかし、なぜ冬鳥であったこの鳥が日本で繁殖するようになったのかの理由は、今のところハッキリせず不明です。鳥の分布は、10年、あるいは50年という単位で変化するものです。