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前田 司郎さん(劇作家・演出家・俳優・小説家)

最初の頃は小説を完成させられなかったとか

 小学校4年生の時、〈物語を書こう〉という授業があったんです。宿題では、原稿用紙4枚分が課されましたが、これは本来、小学生にとっては途方も無い分量です。それが、夜懸命になって書いているうち、気付くと8枚にもなっていたんですね。なんだ、書けるじゃん、と。それまで、自分にそんな集中力や、文章を書く力があることを知らなかったので、余計に、これはいける、向いてるぞ、という気持ちが強くなったんです。ところが、いざ宿題に関係なく書いてみると、どうもうまくいかない。4枚くらい書いたところで、これは駄目だと破り捨ててしまうんです。ようやく最後まで書き上げたのは、高校生になった頃でしたね。

どんな内容の小説を

 冒険ものなんですが、全然覚えてないですね。なにしろ冒険が始まる前のところで終わっちゃうことの繰り返しでしたから(笑い)。プロット(物語の設計図)を立てるとかそういうことも知りませんでしたから。ただ、ずっと続けていました。高校、大学と書き続け、書き溜めた短編をまとめて、賞にも応募したり。賞は取れませんでしたが、大学の頃に書いた長編が、講談社の編集の方の目に留まり、それがデビュー作になりました。

演劇を始めたきっかけは

 ずっと一人で小説を書いていたので、友達も出来なかったんです。同人活動もしていなかったので、これはいよいよつまらないぞ、と思い出した頃に、たまたま手にしたぴあ(映画、演劇の情報誌、現在は休刊)で、1500円や2000円で見られる芝居を見つけたんです。それまで芝居と言えば、10000円くらいは出さないと見られない、縁遠いものと感じていましたが、これなら高校生の自分でも見に行けるぞ、と。早速チケットを片手に、渋谷ジァン・ジァンという小さな劇場に足を運ぶと、たちまちその面白さに、心を奪われ、これなら友達もきっと出来る、とすぐに始めることを決めました。

芝居にはどういう役割で関わりたいと

 小説を書いていたので、当然作家として関わりたいと思っていました。ただそれ以前に、演出家ってなにするんだろう、とか、その世界のことを全く知らなくて。それで、とりあえず、学校に行こうと決めました。色々調べましたが、当時劇作家の学校などはまだなく、それじゃあ俳優養成の学校にいこう、と。高校1年生の時ですね。ダブルスクールのような形でしたが、かわいがってくれた祖母に助けられ通いました。

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