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安部 龍太郎さん(小説家)

 本書はこれら歴史の狭間に生きた王直の海洋浪漫を描くものですが、僕がこういった日本の歴史物にこだわっているのは、日本の戦国時代史観の誤りを指摘するためです。それは古くは江戸時250年の鎖国史観が影響していますが、本来戦国時代はいわゆる「大航海時代」だったわけなんですね。その流れの中で、鉄砲をはじめとした欧州文化が伝播してきたんです。そういったグローバルな史観が、その後の閉鎖的な国内限定の史観によって感じづらくなっていること。また、江戸時代の士農工商のイメージを引きずることで、純粋な戦国時代の商人、流通業者たちの活躍を描けなくなっている理不尽があるんですね。これはひとつの事例に過ぎませんがそういった色んな戦国時代に対する誤解、嘘を紐解いていきたい、是正していきたいというおもいから執筆しています。

あべ りゅうたろう 1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒業。90年『血の日本史』でデビュー。2005年『天馬、翻ける』で中山義秀文学賞を受賞。著作は『関ケ原連判状』『信長燃ゆ』『生きて候』『天下布武』『恋七夜』『道誉と正成』『下天を謀る』『蒼き信長』『レオン氏郷』など多数。2013年『等伯』で直木賞を受賞。

(月刊MORGENarchive2013)

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