『地球のことをおしえてあげる』
ソフィー・ブラッコール/作・絵 横山 和江/訳
鈴木出版/刊
定価1,760円(税込)
みなさんにとっての地球ってどんなところ?
宇宙にいるかもしれない誰かへの『地球がどんなところかしってる?』という問いから始まるこの本は、世界の多様性を知るユニークな“仕掛け”に満ちている。そして「私達が普通と考えているものは、本当に普通なことなのか?」と考えさせられる1冊だ。
文字は少なく、人や動物の表情と生活ぶりが細やかに描かれている。時折、文中には出てこない“ほかとは違う”といわれるような存在が、絵の中で自分をアピールしている。例えば『空を飛べるのは鳥』というページには飛べない鳥も描かれていて、吹き出しに「私は飛べない」とある。文章の説明が、必ずしも全てにあてはまるわけではないのだ。
『地球をあらわすためには、かぎりなく色が必要』という部分では、ありきたりな色ではなく「おこらせないで色」「二等賞色」など、思わず楽しくなってしまうような素敵な名前が並んでいる。綺麗な色だけでなく、妙に生活感のある名前の色もあり、そこがとても人間らしい。
自分ならどんな風に地球のことを説明しよう?そもそも宇宙人には言葉が通じるのか?あとがきに「私達には地球しかない」とあるが、本当にそうだろうか?次々に湧き上がる疑問に作者はこう答える。『人間には知らないことがたくさんあります』
絵本は、ふだん本を読まない人でも手に取りやすいし(漢字にルビがあるのは宇宙人のため?)細やかな描写に想像が膨らむ。1ページ1ページに物語を思い描きながら、ぜひ周りと感想を語り合ってみてほしい。序文にもある通り、これは世界中のすべての人々に贈られる本なのだから。
(評・湘南学園中学校高等学校 中学2年 中部 夏海・藤本 佳穂子)
(月刊MORGENarchive2021)