『未来の学校 ポスト・コロナの公教育のリデザイン』

石井 英真/著
日本標準/刊
本体1,600円(税別)

今までの教育制度、教育実践を振り返る

「ポスト・コロナにおける学校はどうあるべきか。」本書は教育学者である著者による提言である。今年、新型コロナのために学校は臨時休校を余儀なくされた。いつ学校が再開されるのだろう。授業はどうなるのだろう。教師、保護者、子どもはそういう不安感をもったはずだ。一方この休校期間は、教師にとって立ち止まって今後の学校教育について考える機会にもなった。様々な立場の方たちの発言もあった。

 「コロナ禍でのさまざまな学校の困難は、コロナ以前からあった学校や授業をめぐる問題が顕在化した部分が大きい」。と著者は述べている。今までの教育制度、教育実践を丁寧に振り返っている。膨大な参考・引用文献一覧や多くの注釈によって地道な取材活動をしていることが伺える。豊富な図表も理解を助ける。資料に当たり、専門家と対話する。科学的な根拠があるからこそしっかりとした知見になる。

 学校再開後も様々な制約の中で教育活動をしているのが現状である。「新しい生活様式」と言われている。企業も新たな働き方を模索している。学校現場も時代に即応していかなければならないだろう。これからはすべてを包み込むインクルーシブ教育の時代になる。公教育という枠組みの中でも、本書の各学校の実践例を読むとまだ工夫の余地はある。教育に携わる者として、授業を通して子どもたちも教師も「こころの温度」を上げたい。保護者や地域と連携して「大きな学校」を創りたい。「未来の学校」に向けてやらねばならないことは多い。未来に向けて背中を押されるような本である。

(評・横須賀市立馬堀中学校司書教諭 今井 司)

(月刊MORGENarchive2020)

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