『子どもと孤独』

エリス・ボールディング/著 小泉 文子/訳

田畑書店/刊

本体1,300円(税別)

孤独は自分を見つめ直す 無心に何かを突き詰める時間にも

 教員がクラスで一番気になるタイプは「ひとりぼっちでいる子」ではないだろうか。友だちができないのかと心配して、それとなく探りを入れたり、面倒見がよい生徒に声をかけてもらったりした経験は教員なら誰にでもあるはずだ。本人に話を聞くと友だちを欲しがっている場合が多いものの、中には「一人でいるのが好きなんです」という生徒もいる。そう言われてもついついその後も気にしてしまうのだが、本書を読んで反省するところがあった。

 筆者のボールディングは「私たちの測り知ることのできない子どもの内側の成長は、孤独によってのみうながされるのである」と述べる。昨今は「上手に話すこと」「器用にコミュニケーションをとること」が重視される一方、孤独や沈黙に対しては負の面がクローズアップされ過ぎなのかもしれない。ボールディングはクエーカー(キリスト教フレンド派)であり、孤独な時間には創造者と交わることができるとするが、たとえば自分を見つめ直す、無心に何かを突き詰める時間と考えてもいいはずだ。このコロナ禍の中で絆やつながりの大切さが取り上げられがちだ。ただ同時に孤独の大切さも考えるべき時期に来ているのではないか。そのきっかけとなる作品と言えよう。

 なお、後半に収録された、訳者が幼稚園園長として保護者向けに発信していたメッセージから抜粋した〈少女だより〉も素晴らしい。筆者と訳者は信仰を同じくする友人だったそうだが、根底に流れる温かな心は同じであると強く感じた。翻訳書が苦手な方はこちらから読むのもおすすめである。

(評・共立女子中学高等学校教諭 金井 圭太郎)

(月刊MORGEN archives2020)

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