『新型コロナ超入門 次波を乗り切る正しい知識』
水谷哲也/著
東京科学同人/刊
本体1,200円(税別)
動物との関係にもしっかり言及
去年の今ごろ、このような世界を予測していた人はほぼ0だろう。学校という場に限っても、あの3月の一斉休校要請の頃でさえ、ここまで変容するとは正直考えていなかった。マスクや消毒、検温、黙って食事などが日常の光景となっている中で、今後の学校生活に対し、生徒も保護者も我々教員も不安ばかりが募っている。
つい先日、現代文の授業で「ポストモダン社会ではリスクをめぐる科学的な見解は通説へと収束していかない。むしろ発散していく」という文章を取り上げた。多くの生徒がこのコロナ禍と関連付けて読んでいたのが印象に残った。確かにテレビや新聞、ウェブ上での情報を見ても、専門家といわれる人たちの意見でさえバラバラで、何を信じていいのかわからない。この不安だらけの状況を解消する一助となるのは、考える材料となる事実を、冷静かつ丁寧に提供してくれる情報源であろう。本書はマスクや各種検査、治療薬など我々が欲している知識がかなりわかりやすく述べられている。また、著者の専門が獣医学であるだけに、動物との関係性にもしっかり言及しているのが特徴である。
コロナ禍で医療系を目指す子どもが減るのではないかといった言説を目にすることがあるが、少なくとも私の周りではそんなことはない。筆者は医療の道を目指す中高生には第5章から第7章までを読んで、ウイルス学の基礎を身につけ、次の新興ウイルスが流行した際に活躍してほしいと明記している。ぜひ、志ある生徒にも一読を薦めてほしい。
(評・共立女子中学高等学校国語科・金井 圭太郎)
(月刊MORGENarchive2020)