『ヒットラーのむすめ　新装版』

ジャッキー・フレンチ／作　さくまゆみこ／訳

鈴木出版／刊

本体1,600円（税別）

考えるべきことを沢山教えてくれる

　一時期、私は朝のニュースを見る事が好きだった。だが、ほんの数力月で冷めた。今は、朝のニュースはきき流している。連日、暗いニュースが多く流れる。暴言や隠蔽。憧れた角界での暴行が起きた時、私はニュースが嫌いになった。海外での紛争のニュースは、めったに流れない。時々流れる紛争の映像は、衝撃的だ。爆発音が響く中、十才くらいの子が頭から血を流して歩いていた。『ヒットラーのむすめ」を読んで、それを思い山した。

　もしヒットラーにむすめがいたら、という話にひきこまれていく少年マーク。彼がきいた、大量虐殺のラジオニュース。マークはこの時、虐殺は今も続いていると実感する。私だって同じだ。時々しかニュースにならないからといって、紛争が時々しか起きていないわけではない。実感しにくいが、日本が暴行でもめている間も、世界では紛争が起きている。

　マークの想像の中のお母さんは言った。第二次世界大戦の時のドイツの人たちも、見たり聞いたりするのを避けているうちに事態が進んで、気付いた時はもう遅かったと。的を射ている。見たり聞いたりしたくない朝のニュース。避けているうちに、とりかえしがつかなくなるかもしれない。自分で考えることを怠るうちに、他の人の思うつぼにはまってしまうかもしれない。マークと自分の姿が重なった。

　私は、平和でない世界を知らない。だけど、考えることはできるはず。選挙権も十八才からになった今、ニュースに向きあうことはより大切になっている。この本は、私達が考えるべきことを沢山教えてくれる。

（評・本庄東高等学校附属中学校3年 小堀瑠菜）

（月刊MORGENarchive2018）