『マンガの歴史第 一巻 岩崎調べる学習新書』
みなもと太郎/著
岩崎書店/刊
本体1,000円(税別)
大きな足跡を残した「手塚治虫」
マンガは、日本古来の絵巻物や紙芝居などの、絵を楽しむという文化に起源を持つ。その文化が長い年月の中で徐々に変容し、マンガ文化として市民権を得て、現在に受け継がれて来ているのである。
作者[みなもと太郎]氏は、マンガ家であり、マンガ研究家でもある。歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献により「第8回手塚治虫文化賞特別賞」などを受賞している。
マンガの歴史に大きな足跡を残した人物がいる。[手塚治虫]氏である。現代では、マンガといえば長編作品を漫画誌に連載するというスタイルが定着しているが、そのスタイルを確立したマンガ家なのだ。
漫画雑誌の発行は、現在では数多く発行されているが、その草分けとなったものがある。それは、1950年創刊の『漫画少年』という雑誌である。ここに連載されていた作品が、手塚氏の代表作ともいえる『ジャングル大帝』だった。この雑誌は、健全で良質なマンガを子どもたち届けることをコンセプトにしていた。創刊初期からの読者の投稿コーナーに投稿していた子どもたちが、後の『オバケのQ太郎』藤子不二雄氏、『サイボーグ007』石ノ森章太郎氏、『おそ松くん』赤塚不二夫氏たちだったというのだから驚きである。手塚氏の影響を受けた彼らは後に、トキワ荘に合流し切磋琢磨していった…。
本書は岩崎書店が、調べる学習に取り組む子どもたちや教育者への支援から、本の紙質や製本にまでこだわって作られている。これもまた歴史的だ。
(評 千葉県立沼南高柳高等学校司書 遠藤 登美子)
(月刊MORGENarchive2018)