『人はみな、オンリーワン だれも幸せになる権利がある』
森 一弘/著
女子パウロ会/刊
本体1,300円(税別)
人が求めているのは心の安寧、平和、安らぎ
SMAPは『世界に一つだけの花』という曲の中で「小さい花や大きい花 一つとして同じものはないから N0.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one」と歌った。本書においても、一人ひとりが人類史上も、世界の中でも同じ人間はいない、かけがえのない存在であることを示している。
初めに、デンマークを始めとする北欧諸国の人びとの幸福感が高いのは国民が高い税金を収める代わりに、国家が国民の生命を守り、人生を支えてくれるからであるという。また、世界の幸福度ランキング二位のスイスの憲法序文には「国民の強さは弱者の幸福によって測られる」とあり、注目すべき価値観であると指摘する。
カトリックの神父として五〇年以上も働く著者の森一弘さんのところには様々な人が相談に訪れる。小学校で我が子がいじめられている親、長年出社拒否をしている中年の息子の親、若くして自殺をした娘を追い込んだのは自分だと責める母親など、多くの人が教会の門をたたく。森さんはそのような一人ひとりの心に耳を傾け、つらさや悲しさ、苦しさに共感し、ありのまま受容するよう心がけてきた。多くの人が求めているのは、心の安寧、平和、安らぎであるという。
森さんは画家ルオーの作品を好む。それはルオーには苦しむ人々や弱者に寄り添うキリストを描いた作品が多く、そこにキリストの本質があると考えたからである。私には、森さん自身が、苦しむ人と共に歩むキリストに従っている人だからこそ共感するのではないかと深く考えさせられた。
(評・明治学院学院長 小暮 修也)
(月刊MORGENarchive2018)