『幕末青春伝 西郷隆盛 時代をかけぬけた男』

澤村 修治/著
理論社/刊
本体1,200円(税別)

縦からではなく横から見る

 西郷隆盛。誰もが一度は耳にしたことのある歴史上の有名人物の一人だ。
この作品には、もとは貧しい侍であった彼が、さまざまな友人とともに目標に向かって走り出す姿が描かれている。
第一部では、彼の人柄が詳しくわかる。

 彼は若い時期に、めぐまれない生活を送っており、その中でみんなが助け合うことを通し、人間と人間とのつながりとは何かを学んだ。この経験を生かし、民衆を苦しめる藩庁のやり方に疑問を感じ、民衆を守るための意見書を数多く提出していた。これは西郷が二度目の遠島を藩から受け、沖永良部島へ身を移す命令が出て、牢屋で過ごすことになっても同じだった。島の様子を観察し、「村々に穀物の倉庫を作ると良い」などの意見書を提出した。私はこの本を読むまで、彼にこのような一面があるとは知らなかった。

 第二部には、社会の授業で耳にする「薩長同盟」「鳥羽伏見の戦い」「戊辰戦争」などと西郷隆盛の関係について詳しく書かれている。中には、学校の授業では出てこない西郷隆盛のその場面の心情や考えが書かれている。
最後の章になると、大きな戦いの前後の、西郷隆盛の様子・心情が読み取れる。
この作品の特長をひとことで言うと、西郷隆盛を縦からではなく、横から見ているという点にある。それが最大の魅力だろう今年は大河ドラマの主人公となった西郷隆盛。

 あなたもこの本を読めば、西郷隆盛の気持ちがわかる!!

(評・聖学院中学校2年 高瀬 皓大)

(月刊MORGENarchive2018)

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