『逆境からの仕事術』
姜 尚中/著
NHK出版/刊
本体740円(税別)
不確実な時代に―無理をせず、見栄を張らず、ありのままで生きるー
夢だったから?生き甲斐?それともお金のため? 日頃よく生徒から「先生!なんで“先生”やってるの」と聞かれるが、正直なところ、成り行きというか、流れというか・・・改めて考えると難しい。もちろん、今ではこの仕事でよかったと感じている。
かつてはいい大学に入れば将来安泰、いい会社に入れば終身雇用、という時代があったが、そんな時代は遠く、現代を生きる我々に求められる資質や仕事は多様化し、グローバル化している。経済や雇用を取り巻く課題も山積し、薄暗い雰囲気が漂っている。筆者の言葉を借りれば、世の中は先の見えない「不確実な時代」に突入している。
本書ではこの「不確実な時代」の流れをつかみ、困難に打ち克ち、どうすればよりよく働き生きていけるかのヒントが三つの視点から書かれている。
特にその中の一つである「自然(じねん)」という言葉が印象的だ。無理をせず、見栄を張らず、ありのままで生きる、という意味だ。「不確実な時代」だからこそ「自然」の意識が必要である。筆者は自然人の代表としてスティーブ・ジョブズを挙げている。彼の行動や思考はまさに「自然人」そのものである。
しかし、そうはいっても、自分と彼は違う、と思うのは当然だ。しかし、そのような生き方を知り、他人ではなく、“自分”と向き合うことは、これから先の未来を生きるためのヒントになるに違いない。
これから社会に出る人、今の仕事に悩んでいる人、自分に自信が持てない人、ぜひ本書を読んで、自分と対話してほしい。読み終えた後は、きっとほんの少し、今よりも楽に生きていけるはずだ。
(評・千葉県立印旛明誠高等学校教諭 小林 晃大)
(月刊MORGENarchive2016)