『動物たちの命の灯を守れ!』

細田 孝充/著

緑書房/刊

本体1,600円(税別)

動物を飼う人間たちの意識を高めていきたい

 動物は家族である。動物は忍耐強い。人間は動物の声を聞き分けることができないから、気づかないうちに病気が進行していることもある。

 うちの犬も突然、餌を食べなくなった。町の動物病院で検査をし、薬を処方してもらっても一向に良くならない。やむを得ず、動物高度医療センターで精密検査を受け、処置をしてもらった。数か月して危機を脱した。だから、この本に出てくる犬や猫などの動物の様子を見ると他人事とは思えなかった。

 本書は獣医師や動物看護師たちが情熱を持って創り上げた夜間動物病院のドキュメントである。彼らは「夜間の無獣医時間帯をなくし、動物と飼い主、そして獣医療に携わる人たちに癒しと安心を与えられる病院を作りたい」という熱い願いを持って始めようとした。

 しかし、現実は甘くない。開設資金がない。昼夜逆転の診療をする働き手が見つからない。近隣に迷惑にならない建物はあるか。そして夜間緊急に訪れる患者を的確に診断し、時には手術をする優れた技術があるか。様々な困難を、一人一人が情熱、献身、冷静な判断を持ち寄って乗り越えていった。

 夜間動物病院で働く獣医師や動物看護師を支えているのは、健康を回復した動物を見ること、そしてその姿を喜ぶ飼い主を見ることであるという。

 現在、地域の中核的な存在となったこの病院は、夜間の救急医療、昼間の高度医療等と共に、「動物を飼う人間たちの意識を高めていきたい」という基本的なことを目ざしている。それにしても、飼い主、獣医師、動物看護師のそれぞれの目線に立ち、三年にわたって取材した著者に敬意を表したい。

(評・明治学院学院長 小暮 修也)

(月刊MORGENarchive2016)

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