『わくわく!探検 れきはく日本の歴史 3 近世』
国立歴史民俗博物館/編
吉川弘文館/刊
定価1,000円(税別)
当時を描いた図版の中に市井の人々の息遣いが
本校の図書室で言えば、貸出数の多いのは、俄然、小説ではあるが、少し間をあけてその次の位置に来るのが、歴史ものである。昼休みの図書室で本を開いているのも、歴史まんがが多い。「なぜ?」と問えば、「好きだから。」という単純な答えが返ってくる。
本書は、そんな歴史好きの少年少女の興味を一気に引いてくれる。開けば、江戸の街並みの中心に、あるいは合戦の真っただ中にいるような気がする。
それは、「国立歴史民俗博物館」所蔵の歴史資料がページを繰るたび、繰る度目に飛び込んでくるからである。「れきはく」という愛称で呼ばれるこの博物館に収められている図版や各地の博物館から集められた貴重な資料をカラーで間近に見ることができる。まるで、実際に博物館を回ってみているかのようである。もしくは、「れきはく」のガイドブックのような手軽さがある。
ページごとの「江戸城はどんな城?」「江戸時代の人生ゲーム」という見出しからも「それ何?」と好奇心を掻き立てられる。「家光を探してみよう!」というページでは屏風絵の上でのウォーリーならぬ、「家光を探せ!」なのである。家来たちに囲まれた中心に、はたまた、立派な神輿の中に家光を見つけることができる。
本書の魅力は、当時を描いた図版の中に、その時の風物を間近に見ることができるところにある。物売りの篭の背負い方や寺子屋で学ぶ子供の表情、女たちの着物の柄など、事細かに近くで見る楽しみがある。当時の人々が描き残した、そこに生きる市井の人々の息遣いを感じることができるのである。
(評・盛岡市立城東中学校教諭 野里 文恵)
(月刊MORGENarchive2017)