『孤独がきみを強くする』 

岡本 太郎/著
興陽館/刊
定価1,080円

人生で立ちはだかるのは他人でなく自分の壁

 題名から強烈な印象を放っているこの本は、「芸術は爆発だ」と語った太陽の塔の作者、岡本太郎さんのエッセイである。私達人間は常に他人と交流をしている。しないという日はほぼ無い。その中で孤独でいることが良いということは一体何を意味するのだろうか。

 芸術家の思想だから難しいのではと思っていたら、読み始め早々岡本さんに指摘された。型にはめるなと。なるほど、他人がいつの間にか定めていた括りに入った生き方では、自分に嘘をついていることになる。誰かが作った用語の定義・特徴はぴったりと自分の在り方に一致することはないのである。

 彼の思う孤独のススメの中で、「己れを殺せ」というものがあった。一見すると過激に見える言葉だが、人生で立ちはだかるのは、他人ではなく自分だという訴えだと言える。言い換えると「己に打ち勝つ」といったところか。近年、若者の積極性が下降しているように思われる。私もその例外ではない。何かしらのランキングが出た時に真っ先に気にするのが順位…他人なのだ。岡本さんの考えに属して考えると、自分の結果だけを見る、そして次回は過去の自分を超えていく。そうすることで強くなれるのではないか。私は強い衝撃と共に視界が広がり、窮屈だった心も解放された。

 岡本さんの残した言葉からは、毎回強い力を感じた。自分に正直になって思うままに行動をしていくこと。これは現代の私達が今一度思い出すべきことではないだろうか。皆に、岡本太郎のような魂が潜んでいると思う。是非手にとって忘れかけていた生き方を思い出して欲しい。

(評・神奈川県向上高等学校3年 藤井 夏海)

(月刊MORGENarchive2017)

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