『誰もが幸せになるための学力を』

小関 勝則/著

クリエイツかもがわ/刊

本体1,300円(税別)

教師を目指す人に勇気を与える

「生きる力を育む指導」がこの本の中にあります。タイトルでは、「誰もが幸せになるための学力を」とありますが、学力は、国語・算数というような、教科の理解だけでなく、学習の仕方や児童のやる気を育てる手法について詳しく書かれています。また、児童と教師が一緒になって学習をつくり上げていく広い概念になっています。読み進めると、アクティブラーニングの発想による教材開発も取り扱っており、またパフォーマンス評価の視点でも優れた実践になっていることがわかります。

「漢字ずもう」は、若い教師に学んでほしい手法です。この取り組みでは、漢字練習の取り組みが困難な児童に、個別に解決方法を編み出して対応しています。東日本大震災を題材にして深い学びを作り出し、児童と教師が一緒に劇を作成して、多くの人に見てもらう実践は、現実にある問題に取り組んで、児童が成長していく姿が現れています。

 第3章「いじめに向き合う子どもたちに」では、二人の児童の成長を、周りの子供たちの成長によって実現していく過程が、明快に示されています。優れた教師の実践が、本人の発想がわかるように記述されていて、読んでいて心が温かくなるように感じました。

 世の中が、不寛容になっている最近の世相です。多くの現場の教師や、教師を目指す人に参考になり、勇気を与えてくれる書籍です。

(評・前府中市立府中第一小学校長小島 茂)

(月刊MORGENarchive2017)

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