「わたしのマンスリー日記」第14回 それでも人はなぜ生きる!?
講座は終始、感心することあり、緊張感あり、笑いあり、実に充実した講義だったという感想を持ちました。谷川さんはこの講座を通して一切口を利けなくても実に巧みな脚本家であることがよくわかりました。
途中で奥様より谷川さんとの日常の会話の取り方についての説明がありました。以前「天声人語」で紹介されていたアクリル板を通しての会話ではいちいち持ち歩くのは不自由なので、今は空中の50音表を2人で想定し、奥様が谷川さんの目の動きで子音→母音を読んで言葉を読み解いて、皆さんに谷川さんが言いたいことを伝えるということです。
この事実は、今回このエンジン01in市原に参加して一番衝撃を受けたことでした。これは参加者全員が感じたことだと思います。この説明の時は会場がシーンと静まりました。私にはこの2人の会話は神業のように感じました。
それと同じくらい驚いたのは、谷川さんの筋萎縮が進行しているために、今やパソコン「伝の心」のキーを押せず、右腕前にある空気の入った袋をほんのわずかな指の力でポンと押して、パソコンにある50音表で言葉を紡いで文章を作成しているということでした。
例えば「地名」を出すにはタ行→チ、マ行→メ、ア行→イ、そして漢字変換でやっと「地名」の言葉になるというわけです。この行程を想像して谷川さんの文章を読んでほしいです。この講座の前にA4判6枚の問題用紙と講座後に配布された正解と解説のA4判用紙3枚、計9枚を作成し、谷川さんはこの講座に臨んでいたのです。
また、11月末にT2通信68号が発行されました。奥様によると毎号の原稿作成に7日~10日間要しているとのことでした。さらに遊行社モルゲンWEBで「私のマンスリー日記」を月1で連載し、現在13回目となっています。
これらの執筆と並行して、1月発行の最新刊の『東京「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)の増補改訂版の編集作業をしていたことになります。最新刊の私の感想の中で「増補改訂版」発行でも難行苦行だったのではないかと、思わず書いてしまいましたが、奥様の話を聞いてさらにその実感を深めました。