「わたしのマンスリー日記」第6回「昭和型板ガラス」の下心――素適なジョークをありがとう!

 長い人生いろいろなことがありましたが、こんなにミステリアスで素敵なジョークを経験したのは初めて! ほっこり心温まる話です。

「昭和型板ガラス」

 今年4月半ばのことでした。小学館のKさんという編集部の方から1冊の本が届きました。『想い出の昭和型板ガラスーー消えゆくレトロガラスをめぐる24の物語』という大判ですがとても可愛らしい本でした。洗練された装丁と見開きごとに入った挿絵の美しさも印象に残りました。
 送り主のKさんも面識ありませんでしたし、同封されていたお手紙も謎でした。そこには「石坂さんの『ご用命』で、見本本を送らせていただきました」と書かれていました。まず頭をかすめたのは「石坂さんって誰?」、次に「小学館さんがなぜボク(今回はこれで通します!)の住所知ってるの?」――でした。小学館さんとは執筆の協力はしたことはありますが、単著は出したことはなかったからです。
 気になりながらーーボクは思考をストップし本を閉じざるを得ませんでした。当時ボクはこの8月に出すことになった『全国水害地名をゆく』(集英社インターナショナル新書)の執筆に追われ、連日十数時間パソコンに向かっており1冊の本を読む余裕はとてもなかったからです。
 やっと一息ついて本を再び手にして読んだのは5月も10日過ぎでした。どうしても気になっていたんですね。読み始めてやっと書名の「昭和型板ガラス」を「しょうわかたいたガラス」と読むことを知りました。しかしそれでも最初は「昭和型・板ガラス」と読んでしまい、「昭和型」の「板ガラス」って何? と考えながら読み進めるうちにどうも変だなと思い読み直してみたら、「昭和型・板ガラス」ではなく「昭和・型板ガラス」と読むことがわかりました。
 要するに「板ガラス」の本ではなく「型板ガラス」の本ということですが、それだけでは何のことなのかわかりません。ボクの記憶の中にはありませんが、昭和時代に建てられた家には美しい文様を施した型板ガラスが随所に使われていたそうです。挿絵を1枚紹介しておきましたのでご覧ください。
 その型板ガラスが建物解体に伴って廃材同様に捨てられていくのを見かねて収集・保存し、さらにはそれをリメイクしてアートにまで仕上げているのが、本書の著者の主役であるpieniさんこと吉田智子(としこ)・晋吾さんご夫妻。pieniさんはそれにとどまらず昭和型板ガラスの思い出を全国に呼び掛けて集めてまとめたのが本書です。
 ところでボクに本を送るようご用命したという石坂晴海さんについては著者の一人として次のように紹介されていました。
「横浜生まれ。30代から女性としあわせをテーマにノンフィクションの原稿書き。その後農業、子ども、量子、猫、経済、心理学、と興味のままにノンジャンルで執筆。最近は詩作と朗読、古い言葉、ウクレレに興味関心を寄せている」
 これを読んでボクの頭はパニック状態に! 自分のあやかり知らぬ量子の世界からボクの大嫌いな猫に至るまで書ける人なんてこの世にいるんかい!? それが率直な印象でした。石坂晴海っていったい何者? そんな思いに駆られて小学館のKさんに長~い手紙(メール)を送りました。カットできるところは割愛しました。先ずはお読みください

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