「わたしのマンスリー日記」 第1回 “Do for Others”
子どもたちのために
2022年6月1日付の朝日新聞の天声人語で紹介されたのも小暮旋風の1つでしたが、小暮先生を通じて紹介された山梨英和中学校の2年生たちから読後感・メッセージが届きました。私がこの本を通じて送ったメッセージは「絶望さえしなければ 夢はつながる! できることは必ずある!」「とことん生きろ! 死んではダメだ!」というものでしたが、多感な思春期にある中学生の反応は予想をはるかに超えるものでした。私は10日かけてお礼のメッセージを書きました。「思春期の悩みは台風のように過ぎていく」「だから耐えろ! 耐えることによって人は強く大人になっていくんだ」――そんな思いは中学生たちの心に十分届いたようです。「谷川先生は死の恐怖といつも隣り合わせにいて私以上につらい経験をしていると思います。ですが、お互い頑張って生きていきましょう!!」この一言を見た時溢れる涙を抑えることができませんでした。何という優しさ! 年齢のギャップなんて簡単に超えてる……。ALSに倒れるまで私はたくさんの本を書いてきましたが、子どもの心にストレートに響く本はALS宣告以降に書いた3冊です。自分の拙い生き方が他の人に生きる勇気と元気を与えているとしたら、その人たちのために(for others)生きよう。そう思うようになりました。
アルフィーのこと
そのothersは子どもに限らないこともわかってきました。ALSの宣告後に多くのメッセージをいただいてきましたが、その大半は「先生の生き方から勇気をもらっています」「私も頑張ります」というような文言が散りばめられていました。でも私にはそれらに込められている意味がピンときませんでした。自分の生き方が他の人に生きる力を与えるなどたった一度も考えたことがなかったからです。小暮修也先生がここまで扇を広げて私を紹介くださったことも、当初は理解できませんでした。そもそも自分が他の人に影響与えるなんてとても不遜で、そんなことは思いつくことさえありませんでした。ところが、小暮先生のかつての同僚で後に東洋英和女学院大学教授を務められた陶山義雄先生から耳を疑うようなニュースが飛び込んできました。私の本を読んで感銘を受けた先生はこの本に込められたメッセージをもとに新曲を作ってくれないかと、あの人気歌手グループアルフィーの高見澤さんに声掛けしたというのです。
驚天動地とはこのようなことをいうのでしょうね。私は知らなかったのですがアルフィーのお3人は明治学院高等学校の卒業で、陶山先生は直接「聖書」等を教えたとのことでした。一介のALS患者が難病や障害にめげず、それでも生きようとする思いがアルフィーの曲に乗って流れたらどれだけの人が勇気づけられるか――まずそう思いました。しかし、それ以上に思い知らされたのは86歳になられるという陶山先生の「本気度」でした。先生の「本気度」に接することによって私の生き方が高齢者の方々の力にもなっていることに気づかされました。このことによってothersの中に高齢者の皆さんも入ることになりました。ある時次男の妻(嫁)が何気なく「お父さんの本は年齢に関係なくすべての人に勇気を与えている」とつぶやいてくれたことがありますが、今になってかみしめています。