「わたしのマンスリー日記」 第4回 「栗山監督の二刀流魂—WBC栄冠獲得の秘密」

大谷選手のバントと周東選手の走塁

 日本野球の強さの秘密は野球の緻密さにあります。WBCの全試合をフルタイムで見たわけではありませんが、私には2つシーンが特に印象に残りました。
 1つは大谷選手のバントです。3月16日対イタリア戦3回裏1アウト、ランナー1塁に近藤健介選手を置いていきなり大谷選手が3塁線にバントしたのです。ちょうどその場面を見ていた私は「すごいことやるな!」と声を上げそうになりました。
 そのあとランナー1・3塁で吉田正尚選手の内野ゴロでまず1点、そして何とそのあと岡本和真選手が3ランホームランを放ち一挙にイタリアを突き放したのでした。
 このシーンを見た時「日本は負けないな!」と確信しました。こんな不遜な言い方ができるのは私には野球について多少心得があったからです。私の幼少の頃は遊びといえば野球くらいしかなく、暇があれば草野球に興じていました。中学校時代には市内の野球大会ではピッチャーも務めたこともあります。
 暗い受験生活を切り抜けて大学に入った私は迷うことなく準硬式野球部に入りました。東京教育大学といえば今の筑波大学のことですからさぞかし強かったでしょうとお思いでしょうが、あにはからんや部員は全員(多分)大学に入って野球を始めたという有様で、成績も2部リーグのトップを東大と競うといった低レベルの野球人生でした。それでもその時期身に着けたトレーニング法は忘れることはなく、ALSで倒れるまで我が家の屋上でバットの素振りを続けていました。
そんな私にもう1つ共鳴と感動を与えてくれたのは3月21日早朝に行われた対メキシコ戦でした。試合は3対2で追い込まれていました。そして最終回9回の村上宗隆選手による劇的サヨナラ2ベースヒットでした。
 国民の大多数は村上選手の逆転サヨナラ打に狂喜しましたが、私は別の角度からテレビの画面を見つめていました。ランナーは2塁に大谷選手、1塁に吉田選手がいたのですが、栗山監督は待ってましたとばかりに吉田選手に代えて周東佑京(しゅうとう・うきょう)選手に代走を命じたのです。見事な采配でした。WBCを通じて最も感銘を受けたのはこの周東選手の力走・快走でした。とにかく速い!

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