『少年事件、付添人奮戦記』

野仲 厚治/著
新科学出版社/刊
定価1,728円

迷える子どもたちの行く道を照らす

 迷える少年、少女たちに寄り添った弁護士付添人活動の記録です。弁護士一年目の、ある少年事件をきっかけにその活動が始まります。その少年は、質問責めにされて「少年院に入れた裁判官を一生許さない」と言う。立てた作戦がレポートを書いてもらうことでした。少年が更生するには、少年の言い分に耳をじっくり傾けることが重要だと知ることになります。付添人の役割は、少年自身が更生するための手助けをすることだと言います。

 著者自身の生い立ちは、家庭的な問題もあり順調ではなかった。高校時代は不登校も経験します。そんな経験が、弁護士になってから「非行の子どもに付き添うこと」が使命だと思うようになった原点だと言います。それを折りに触れ、少年たちにも語ります。

 弁護士付添人だけでは解決できない問題も、恵まれた出会いによって解決に向かうこともあります。特に恋の力によって立ち直っていく光景は微笑ましい。親が変わっていく中で、解決に向かうこともあります。その過程では、保護者向けに課題図書の提起があったり、子どもとの手紙のやりとりもあったりする。やがて子どものありのままを受け入れ、親子関係が氷解して、問題が解決していきます。

 この本の内容は、少年事件という特殊な例のように感じられますが、子育てや教育の普遍的な方策が語られています。その子に合ったやり方で、自分や他者や社会と向き合うことができるように案内されます。それは学びのパワーの源泉になり、迷える子どもたちの行く道を照らします。

(評・埼玉県立小鹿野高等学校教諭 江田 伸男)

(月刊MORGENarchive2017)

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