「こころの病も心身一如の自然治癒力」―季節性うつ病から双極性障害を自ら体験して― 第5回 「ストレスで胃潰蕩に――自然療法と祈りの力」
私は順天堂大学医学部卒業後、胸部外科医局勤務を経て、卒後7年目に地方中核の益田赤十字病院胸部 外科専門医として赴任しました。一人科で歩み始めたのです。
一般外科は、全員鳥取大第一科所属の派遣医師四名で占められており、外科医で私が勤めるためには、 米子の外科を医局詣でし、門下生としての研修を受けなければなりませんでした。外科は当然手術がありますからチーム医療です。外科手術はもとより、当時は麻酔科がなく、他科手術の麻酔係もやります。外科のさまざまな手術の前立ち(助手)もつとめ、私の執刀する主として肺の手術 は手伝ってもらいます。
さて医師としての生業で、勤務医時代は「先生におまかせします」の「おまかせ医療」でした。 ところが22年間の勤務医を終え開業して18年目の今日では、「病気は治すもの」ではなく、完璧な自然治癒力で「病気は治るもの」と達観したのです。私の場合、この立場の違いは、精神的ストレスに大きな差があると感じています。とは言っても、どちらでも成果があがって大いに感謝されると、快感を生み出すのに関わる脳内の回路「報酬系」が活動して、共に喜びを得られます。
一方、生死にかかわらず不幸な結果が出ると落ち込みがひどかったです。 一人科ゆえの責任感からか、A型の 「凡帳面」「神経質」「情に厚い」性格からか、はたまた自分の名前「健治」(健やかに治める)の使命感からか――。いずれにしろ逆境に弱かったわけです。そして、ストレスフルな一人科勤務医4年目に、20才から吸ったタバコ害も加わって、胃潰蕩を発病、入院治療となりました。初めての入院直前、タバコをちょっと吸ったのですが、とても気分が悪くて止めました。以来、夢には自分の喫煙シーンが何度も出てくるのですが、もらいタバコ もせずピタリと止めています。
以後、胃薬は常用していましたが、平成4年(勤務医16年目)、手術中の医療死亡事故が発生し、挫折感をひきずるうちにその翌々年、胃、十二指腸潰蕩の大量下血、出血性ショックで緊急入院治療となりました。このとき輸血も受けています。その後も阪神大震災の平成7年をうつうつと過ごし、 11月には胃病再燃、吐下血で再々入院となりました。