「こころの病も心身一如の自然治癒力」―季節性うつ病から双極性障害を自ら体験して― 第1回 病気は「治す」「治してもらう」ものではなく「治る」もの
私のうつ病体験の話になりますがうつ状態が始まって一番辛いこと は、このように文章を書き進めることが全く出来なくなることでした。礼状の一筆でさえ、自分の言葉が湧かずにズルズルと出し遅れてしまい 、仕方なく手紙挨拶文百科通りの紋切り型の葉書を出しました。
千島学説(生物学者・千島喜久男の提唱する赤血球を体細胞の母体とする説)研究会(以下、千島学研と略す)の忰山紀一前代表(1941~2010)が悲願された、作家100人、講師100人を養成する文章塾(後の日曜作家クラブ)では、「うまく話が山来る人になれば、うまく書けるのだから、話すように書きなさい」と教わったものです。
ところが、千島喜久男博士生誕110年祭(平成21年10月)で私に与えられたテーマ「瘀血(おけつ:血液が生理的な働きを失って、全身の血行が滞った状態)の概念 と千島学説」の準備にかかる頃は「うつ状態」で、参考文献を読み始める気力も湧かずダラダラと一日が過ぎて行きました。
そんな時期に、事もあろうに鈴木一策同人の係わっている出版社からの依頼原稿が舞いこんできたのです。「共同体による真の医療養生所あうんくらぶの実践」と題して書くよう要望されたのです。忰山前代表から「小学生の作文の気持ちで、何も構えずに、薮医者の日常生活、普段の姿勢を描き 切ってください」とアドバイスを受けて何とか書き出したものの、途中でペンがまったく進まなくなる、と言うよりも頭が真っ白白、思考停止してしまいました。最後には、前代表に懇願して「愛する田舎の薮医者」と題して代作を提出しましたが、結果は不採用でした。当然、110年祭は欠席でした。この後も「うつ病」を繰り返しましたが、一日の生活をとにもかくにも「早起き」して「祈り」を軸として送ったところ、こころがブレない生き方が、だんだんと出来るようになっていきました。
平成26年の10月に処女作として上梓した『医者が学んだ祈りの力』(幻冬舎)に、「病気の本体は、心と体のしこりであり、病気は「治す」「治してもらう」ものではなく、複雑開放系の生命体は、元来完壁な 自然治癒力があり、病気は「治る」ものです」と私は言ってます。ただし、自然治癒力の発動を妨げる ことをしなければ、との条件がつきますが。
では、諸氏の唱える自然治癒力と、千島学説に基づく自然治癒力とを提起してから、こころの病の心身 一如の「治り方」を展開してみます。