青い海と空のみちのく八戸から 波動はるかに 第1回「虹っ子」と蕗の薹            

 その「何か」が、八戸に「多文化×多世代×多言語」で交流するサロンと「虹っ子」の原画を沢山の方々の見ていただくギャラリーを創りたいという微かな「夢」になって、私たちが北へ向かう決意となった。
 
 引越の日は、朝から雪が舞っていた。我が家になる古い日本家屋は日本間も廊下も台所も震え上がるほど寒い。初めての買い物は雪かき用スコップと長靴だった。灯油ストーブ、電気ヒーターを連日買いに走った。寒い。テレビのアンテナの接続が無いため、10日間近くテレビは点かず、年末の賑わいも、気候情報も何も届かない。

 「シーン」という音とともに朝がくる。カーテンを開けると、屋根も庭も道路も白銀の世界。喧噪の音は、すべて雪に吸い込まれている。「シーン」そして「ザッツザッツ・・・」雪かきの音が響いてくる。服を何枚着ても体温は保存されない。寒い。テレビが点いて、八戸地方だけではなく、全国的に大寒波、そして大雪だったことを知る。ほとんど冬眠状態で籠っていたが、市役所など出かけるときは市営バスに乗る。吹雪の中、停留所でバスを待つ。バス中でお婆さんたちが声をかけあっている。「寒いなす~」「今日はすごしいいなす~」そのとたん寒さが溶けて、体内にじゅわあと温かい温度が巡る。半世紀ぶりに戻った土地は、街も生活スタイルもだいぶ変化し、お国ことばもだいぶ変容しているかもしれないけれど、皆が話していることばの源流が私の心を揺らし響いてくる。

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