「わたしのマンスリー日記」第19回「どんな難病でも私たちは諦めない!(その1)さかもと未明さんとの対談SP
あと数年しか生きられず、不自由な身体でできることは限られている。下手をしたら明日死ぬかもしれない。その時後悔しないためには、どうしたらいいんだろう……。何かを目標にしても、叶えられない時また辛くなるだろう。いろいろ考えて、結局は自分が楽になりたかったからなんですけれど、思い至りました。「できなかったことを悔いるより、今まで生きてこられたいろんなことに感謝したい」と。
するといろんなことが別の角度から見えてきたんです。漫画家志望でもデビューできないままの人もいる中、自分はデビューでき、ほめられたこともあるし、本も出してテレビにも出た。いろんな人が助けてくれて幸せをたくさんいただいたよね、と。そしてやっと考え直せたんです。
「明日死ぬかもしれないけど、残された命と時間は、今まで受けた恩への恩返しに使いたい、少しでも誰かの役に立てるように志を立てて、道半ばで終わっても後悔がないよう、毎日を素直な気持ちで感謝して生きよう」
そうするとすっと楽になったんです。ああ、これが本当に生きる道なんだと。誰かに勝つことや、人より成功することなんかが人生の目的ではないと、やっとわかったんですね。
【谷川】死ぬかもしれないという状況から、人のために尽くそうと思いを転換することは、実は容易なことではありません。本書のタイトルは編集者と相談して決めたのですが、「利他の心で生かされ生かす」というサブタイトルは編集者からの提案によるものでした。著者よりも編集者の方が物の本質を見抜いている。
私は未明さんと同じで、がむしゃらに仕事をするタイプでした。意識の上では「世のため人のため」に働いてきたのですが、「利他」という意識は全くありませんでした。「利他」という言葉を意識するようになったのは、昨年(2023年)の3.11チャリティコンサートにバケツ隊として参加してからですが、私の場合は恩返しというよりも、人に支えられているだけではだめでもっと苦しんでいる皆さんを支えねばという意識の方が強かったですね。
誰かに勝つことや、人より成功することなんかが人生の目的ではないなんて、大拍手です。お互いに難病と闘うことによって、一皮むけて成長したのだと思いますよ。
【未明】そうですね。確かに成長したかもしれません。明日死ぬかもと意識した人間が一番求めるものは、優しさです。愛です。お金なんかいくらあっても慰めにはなりません。成功や名誉もすぐに忘れられるし、自分を救ってはくれません。そのことがわかって良かったと楽になった時、「残された時間を、誰かに優しくできたらいい。人のために生きたいな。それだけでいいんだ、長さじゃない」と、やっと思えたんです。
まさに谷川先生がおっしゃるように「利他の心で生かされ生かす」という気持ちでした。人のことを思った時、初めて自分が救われ、生かされているとわかりました。だから人のために生きたい。そう思った時、変わった私に気づいてくれた多くの方が、手を差し伸べてくれました。世界が開けたんです。